人民裁判の「クロ」認定が
その後の評価を決めてしまう

 実は三浦氏もゴーン氏と同じで、裁判の前に週刊誌やワイドショーで本筋とかけ離れた「悪行三昧」が触れ回られた。女性関係が派手だ、少年時代もフダ付きのワルだった云々と凄まじい個人攻撃がなされた。だが、ここからが三浦和義という人物のすごいところで、勾留中にこれらを事実無根の名誉毀損だと次々と訴え、ほぼ全てのマスコミから慰謝料を取ったのである。

 しかし、世間の人はそんな事実はほとんど知らず、「悪行三昧」が事実のように語られている。要するに、一度でもマスコミによる「人民裁判」で「犯罪者」認定されてしまうと、その後に司法の場でどんなにそれを否定するようなジャッジがなされても、その評価が覆ることは難しいのだ。

 この辺りは、同じく弘中氏が代理人を務めた小沢一郎氏にも言える。2010年に資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規制法違反の疑いで強制起訴されたが、判決では「無罪」を勝ち取った。しかし、元秘書が有罪となっていることから、世間的には「グレー」なイメージが尾を引いており、ネットを見渡せば、実際は「クロ」であると決めつけているような人もいる。

 なぜこうなってしまうのかというと、やはり裁判前のマスコミ報道という「人民裁判」で、「クロ」という判決が出て、そのイメージの方が強いからだ。

 例えば、今のゴーン報道を彷彿とさせるような「小沢祭り」が連日のように続いた2010年、1月20日の「読売新聞」では一面でドーンと大きくこんな風にぶちまけている。

《「小沢氏 4億不記載了承」 石川容疑者が供述 東京地検 刑事責任 追及視野》

 800万部の発行部数を誇り、ネットでも記事を配信している大マスコミが、こういうことを報道すると、人を疑うことを知らぬ善良な日本人の多くは、「やっぱり小沢さんはクロだったんだな」と衝撃を受ける。

 この2年10ヶ月後に東京高裁で「無罪」が確定するのだが、その時には疑惑報道時ほどのインパクトはなかった。つまり、このファーストインプレッションがあまりに強烈すぎて、「え?小沢さんって悪いことをやった人でしょ?」というイメージが定着してしまうのだ。