ゴーン法廷発言に見える「起死回生」のしたたかな抗戦術
ゴーン氏の法廷での発言を聞くと、起死回生のポイントを冷静に見据えているように感じる。元カリスマ経営者が模索しているであろう抗戦術を読み解く 写真:ユニフォトプレス

東京地検特捜部が逮捕した
カルロス・ゴーンという男の手強さ

 2019年1月8日、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が、逮捕から50日ぶりに姿を現しました。この日、東京地裁で開かれた勾留理由開示手続きの場で、身の潔白を訴えたのです。主要新聞各紙は、この内容を一面で報じました。

 とはいえ、報道を見る限り「サプライズな情報はなかった」というのが主要メディアの反応です。いったいゴーン氏は何を主張しようとしているのでしょうか。

 私は大企業経営者向けの経営コンサルティングという仕事に携わって来た関係で、今回のゴーン氏の行動からある狙いを感じました。本稿ではそのことについて述べてみたいと思います。

 さて、法律に詳しい知人の話では、今回の件を含め検察と徹底抗戦するカルロス・ゴーン氏の姿勢は、今後の展開においてあまり良いことはないと言います。外圧で早期釈放というシナリオが噂される一方で、従来の日本の「人質司法」の前例に則れば、最悪の場合、容疑を否認する限り証拠隠滅の可能性があるということで、今後半年近く拘留が続く可能性すらあるというのです。

 同時に、限られた弁護士との接見を通じて、ゴーン氏は日本の司法制度がどのようなもので、自分の立場や今後の見通しはどうなりそうかといった、法律家の立場からの正しいアドバイスも受けているはずだといいます。

 ではなぜ、ゴーン氏は早期保釈につながらない今回のような行動を取っているのでしょうか。

 そもそも、私のような経営の専門家の立場から見て重要なことは、カルロス・ゴーンという男は突出した闘士だということです。いわゆる日本のサラリーマン経営者と違って、ルノークラスのグローバル企業のトップに就くような人材は、激烈な社内の権力闘争を勝ち上がって来た「生き残り組」なのです。

 人生の中で何度も危機的な戦いに直面し、それを勝ち上がって来た。その意味で、突然の逮捕という不測の事態に直面しても、並の日本人のように簡単に心が折れたりはしないはずです。むしろ今回の出来事を「新たな戦いが始まった」と捉え、その戦いに全精力を集中する。東京地検特捜部が逮捕したのは、そんな人物なのです。