「人工透析中止問題」で揺れる公立福生病院「人工透析中止問題」で揺れる公立福生病院 写真:日刊現代/アフロ

 透析中止を医者が提示した結果、患者が死亡した事件が、テレビや新聞でも大きな話題となっている。マスコミもTwitterなどのネット言論も、おおむね透析中止した福生病院に批判的だ。一方で、福生病院を擁護する意見も散見される。しかもそれは、医師や病院理事長といった医療ど真ん中の人たちから擁護論である。

 僕は透析中止を患者に提案する病院や医者がいること自体が衝撃だったが、それを擁護する医療関係者が何人もいることがさらなる衝撃だった。これはつまり、「患者が望めば死なせてもいい」と考える医療関係者が世の中の人が思っている以上に多い、ということだ。その意味では、今回の件は福生病院だけの問題ではない。読者の皆さんは、病院に殺されないためにも色々と情報は持っておいたほうがいい。

 そこで今回は、患者の立場から「透析のリアル」を語ってみたいと思う。というのも、僕もまた透析患者だからだ。数年前、当連載の記事で「あと数年したら透析することになるだろう」と書いた通り、約1年前に透析患者となった。いまは週に3回、透析クリニックに通っている。出張も多いため、その時は出張先の病院で透析を受けている。合計すると10ヵ所くらいの病院で透析を受けてきたため、透析クリニックの医療現場について結構詳しくなってしまった。

透析中止!? 患者の僕が驚く
あり得ない提案

 そんな僕が今回のニュースを聞いてまず感じたのは、「透析って中止できるのか!?」という驚きだ。というのも、僕が知る限り透析クリニックというのは、とにかく何がなんでも患者に透析を受けさせようとするからだ。それは職業的な倫理というより、ほとんど執念みたいなものだといえる。

 ちなみに透析は、週3回行うのが基本。つまり、どこかで中2日のインターバルが空くことになる。たとえば月水金で透析をしていると、土日の2日間は透析しない日が生じる。基本的にこの「中2日」が、透析患者にとっては最大のインターバルとなる。ただし、何らかの事情でそれが中3日になったとしよう。すると、医者も看護師も激怒するのだ。

 実際、僕も一度、仕事の関係でやむなく中3日になってしまったことがある。そのことを病院に事前に伝えた時には、看護師にも院長先生にも激怒された。「何がなんでも病院に来なさい。死んでも責任とれないぞ」くらいの勢いで叱られたのだ。まあそうは言っても、仕事の都合。なんとかお願いして中3日にしてもらったのだが、彼らを説得するのは本当に大変だった。

 また、旅行先やお正月の時期には、透析時間がいつもと変わることがある。一度それをうっかり忘れてしまい、予定の時間に大幅に遅れてしまったことがあった。そんな時も15分も遅れようものなら、電話がガンガンかかってきた。それも旅先のクリニックとかかりつけの病院のダブル攻撃で、「いまどこにいるのか?あと何分で病院に来れるのか?」と問い詰められる。ちょっと遅れたくらいで大騒ぎなのである。

 こんな状況だからこそ、今回の事件のように透析中止を医者が提案するなど、僕の感覚からしてもあり得ないことだ。おかしいと思う点は多々あるが、最大の謎が「患者の状態」だ。報道によると、「シャントにトラブルがあり、医者は『首周辺にシャントを作るか、透析中止するか』の選択を迫った」という。