今世界中でブームになっている「箇条書き」を活かしたノート術、バレットジャーナル。仕事の生産性を上げるだけでなく、思考を整理し、自分自身の棚卸しに役立つと、世界中で話題になっている。デジタル全盛の時代に、なぜアナログのノート術が流行るのか。手書きにはデジタルにはない、思考整理における様々な効能があるようだ。本連載では、発案者であるライダー・キャロル氏が書き下ろした初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の刊行を記念して、著名なバレットジャーナル・ユーザーや専門家たちに寄稿してもらう。今回は、長年ノートを使った情報整理を行い、『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』などのベストセラーを出す奥野宣之氏が、バレットジャーナルの魅力と、手書きの効果について語る。

なぜ「箇条書き」が世界中で話題なのか?

奥野宣之(おくの・のぶゆき)
1981年大阪府生まれ。同志社大学を卒業後、出版社・新聞社での勤務を経てフリーの著作家・ライターに。代表作はシリーズ累計50万部の『情報は1冊のノートにまとめなさい』、『歩くのがもっと楽しくなる 旅ノート・散歩ノートのつくりかた』など。

 最近「箇条書き」が、世界でひとつのムーブメントとなっているようだ。一説によれば、昨年アメリカで発売されベストセラーとなっている『The Bullet Journal Method』(邦題:『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』)の著者、ライダー・キャロル氏が、その”箇条書きブーム”の発信源であるらしい。

 たしかに箇条書きはシンプルでラクな記述法だ。そんなことは小学生でも知っている。では、なぜそんな自明のことが今さらノウハウ化され、これほど人の心をつかんでいるのだろう? 発売前から話題になっている同書から、いくつかポイントを紹介してみる。

ムダな記録が役に立つ理由
ノートは人生という「図書館」の蔵書

 読み始めてすぐ「ああ、この人は自分と同じだ」と思った。詳しくは拙著『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』に書いたが、私は20年近く前から日々の記録や発想、各種記事のスクラップなどをノートに記録している。そのやり方は、

(1)常に1冊のノートだけを持ち歩く
(2)ノートは前から順に使っていく
(3)最後まで行ったら「代替わり」する

 という単純極まりないもの。見た目はごちゃごちゃで参照するのに不便そうだけれど、意外と前後関係や手書き時の記憶、紙面全体の印象などを手掛かりすることで情報は探し出せる。

 現在、私のノートは238冊目で、数えてみたら2018年に使ったノートは10冊だった。過去のノートには、就職した日の感想から、10年前に読んだ本の抜き書き、子育ての記録、去年の夏の旅行記……と、あらゆることが収録されている。

 これらの情報は、すべてが「活用」されるわけではないけれど、自分の足跡が「時系列のノート」として目に見えるかたちになっているのは、気分のいいことだ。

『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の著者、ライダー氏も同じようにノートを引き継ぎながら使っており、同書では、「(使用した1冊1冊のノートは)人生という図書館に自分だけの蔵書を加えていく」ことだと表現している。この表現は言いえて妙だ。

 そう、過去のノートの中には、今の自分にとって有用なものもあれば、二度と参照しないような情報もたくさんある、今後も活かす機会のないアイデアもたくさん書かれているだろう。一見、ものすごく無駄な記述を重ねているかに見える。

 ところが、そんな膨大な情報のストックこそ、まったく予想していなかった変化や、大きな選択肢の前で足踏みしたりしたとき、自分のヒントになるのである。自分が一体どんな人間で、何が得意なのか、何が好きなのか、何を大切にしているのか、このような問いにすぐ答を出すのは困難だが、過去のノートをめくってみればハッキリと浮かび上がってくる。

 よく聞かれる質問に「こんなどうでもいいことをメモして、何か役に立つのか?」というのがある。そう思った人は想像してみてほしい、ベストセラー小説や定番の参考書・辞書・事典しか置いていない図書館を。困ったときに「行ってみよう」と思うだろうか?「こんなの誰が読むんだろう?」と言いたくなるようなものがあることは、じつは非常に重要なことなのだ。