世界中で大ブームとなっているバレットジャーナル。デジタル全盛期に、アナログのノート術がなぜここまで話題なのか。「世界最強のノート術」とも呼ばれるそのメソッドを、発案者のライダー・キャロル氏がまとめた初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』がついに日本上陸。デジタル時代にこそ、ノートは自分を見つめ直し、マネジメントするために大きなメリットがあるようだ。長年、手帳やノート文化を見続け、『手帳と日本人』を上梓した手帳評論家の舘神龍彦氏が、デジタル時代にバレットジャーナルが話題となる今日的な意味を読み解く。
数年前から日本でも話題のバレットジャーナルだが、発案者であるライダー・キャロル氏による初の公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』が日本を含む29ヵ国で、このタイミングで刊行されることはとても大きな意味を持っていると考える。その理由は次の3つである。
デジタル時代に問い直す
「自分マネジメント」の極意
デジアナリスト・手帳評論家
知的生産の観点から手帳やノートについて著述・講演活動を行う。主な著書に『手帳と日本人』(NHK出版新書)『最新トレンドから導く手帳テクニック100』『iPhone手帳術』(えい出版社)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)『システム手帳新入門!』『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。「マツコの知らない世界」(TBSラジオ)「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などをはじめテレビ・ラジオ出演多数。ISOT2019文具PR委員。Yahoo!Japanクリエイターズプログラムで、手帳・文具・ガジェットに関する動画を発信中。https://creators.yahoo.co.jp/tategamitatsuhiko
まず、このノート術が紙の記録媒体による個人マネジメントの体系的な方法であることだ。バレットジャーナルでは、ノートを使って各種の記録を取っていく。
そこには、アプリに手取り足取りやってもらうこともないし、GPSによる移動の軌跡のトレースもない。ただ淡々と紙の面に自らのやりたい、やるべきことを書き、それをチェックしていく、また必要に応じて各種リストのページを用意し、記入し、適宜参照したりチェックしたりする。
一見こういう説明を読むと、「ノートなんだからあたりまえ」という感想が返ってきそうだ。だが今は2019年である。Windows95をきっかけとしてパソコンが普及してから24年がたち、もっとも成功したスマートフォンであるiPhoneが登場して10年が経過している。記録の目的や入力の方法などはすべてツールがお膳立てしてくれる。
その現時点において、ノートとは、何のソフトウェア(利用目的)も定義されていない、考えようによっては、はなはだ不親切なツールである。
そのノートというツールに自らの主体性を持って、本書のPART2で紹介されているようなインデックスを用意し、フューチャーログを書き、マンスリーログとデイリーログを取る。
そのための“紙のノートに専用のページを用意する”のは、デジタルツールによる各種お膳立てになれた現代の人間にとっては、ちょっと大変かもしれない。
だが、デジタルツールしか知らない人にとっては、新鮮な経験だ。それは自らの能動性と想像力をきちんと働かせて、自らが置かれた状況の整理に取り組むことだからだ。
公式ガイドは、バレットジャーナルという、いっけん前時代的な(とはいえ主体的で積極的な)この個人マネジメントの方法をきちんと教えてくれる。パソコンのタイピングに慣れた人にしてみれば、手書きは冗長で非効率的だろう。実際そのことも本書では指摘されている。そしてその対応策としての記法も紹介されている。
蛇足ながら付け加えれば、ノートや手帳の利用法に一定のルールを与えて運用するという考え方は、拙著『手帳カスタマイズ術』で提案した、「手帳マイルール」にも合致している。