アナログは効率がいい
「手書き」の方が思考は前進する

 続いて、バレットジャーナルで興味を惹かれたこととしては、その「手書き量の多さ」がある。箇条書きだからラクかと思いきや、書く量は決して少なくない。

 スケジュールもタスクも目標も書いて、それを後でチェックしてまた書く。過去のメモを参照してリライトするケースも多い。仕事などの実用面にとどまらず、人生の幸福感を高めるための「感謝ログ」といったノウハウまで登場する。

「そんなにいろいろノートに書く時間なんかないよ」と思う人も多いだろう。だが、ものは考えようである。忙しくて、うわーっ! と叫びたいようなとき、タスクを紙に書いてじっくり優先順位を付けたり、机を片付けてリセットすることで救われたといった経験は、きっと誰にもあるだろう。無用な回り道のようでも、精神的にもラクになるし、最終的に早く仕事が片付いたりする。「手書きすることで時間ができる」という逆説は意外とあるのだ。

 さらに、手書きの効果はこのような「整理」にとどまらない。紙の上でペンを動かすのは単純作業ではなく、自動的に頭も動かすことになるからだ。

 たとえば、単純に今抱えているタスクを書き出してみるだけでも、「これは時間かかるなぁ」「この報告書には例の話を書くか」という具合に、頭の中にはさまざまな声が流れるだろう。こうしてタスクリストが完成するわけだが、じつはこのリストは「余禄」でしかない。本当の成果は「タスクリストの作成を通じて進んだ自分の考え」の方なのである。

 つまり、手書きは「時間と労力の無駄」ではない。逆に「効率がよく有用な行為」と言ってもいいくらいだ。

「いつも時間がない」「いい考えが浮かばない」という人こそ、視野を広げて仕事の仕切り直しをしたり、自己対話を通じて考えをまとめたりといった「手書きの効能」をうまく取り入れてほしい。「バクチでもいいから手を動かせ」という格言は伊達ではないのだ。

 徹底した合理主義の精神も、『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』の見どころだ。皿洗いが嫌いだからノートによるマインドフルネスで克服する話などは、いかにもアメリカ人らしくて面白い。

 日本に多い「こんなのいいでしょ?」的な本と違って、仕事の効率化から生き方まで「ノートにこう書くと、こういう理屈で、こうなる」というロジックがはっきり示されている。 世の中そこまで理詰めでいくものなのかな……と呟きながらも、いつの間にか著者の手法をマネしている自分に気づいた。