「お母さん、廊下で倒れちゃったんだよ。死んじゃうかと思った」

 泣きそうな顔。

 すぐに医師が現れ、説明された。

「目が覚めて、びっくりしたでしょう。意識を失って搬送されたんですよ。ご家族のお話では、意識を失ったのは初めてなんですよね」

「はい、一度もありません」

「自律神経の不調ということで、自宅で療養しているんですね」

「はい、でも全然よくならなくて。気を失ったのも初めてで。私、どうなっちゃうんでしょう」

「検査の結果、命に関わるような病気の心配はないので、そのへんは安心して大丈夫なんですが、今後も倒れるようなことがあれば、大けがや事故になりかねません。

 恐らく、自律神経障害から来る、起立性低血圧だと思うんですよ。起立性調節障害ともいいます。

 簡単に言うと、立ち上がった際に必要な血圧調整が行われず、一過性の低血圧とそれに伴う症状が引き起こされる病態を指します。血圧調整は自律神経の仕事ですが、あなたの場合、神経がうまく働いてくれないんですね。

 この病気は、特に思春期前後のお子さんに多いんですが、中高年でもかなりおられます。女性が多いですね」

「起立性低血圧症という病気があるんですね。よその病院では、そんなこと全然言ってくれませんでした。治療できるんですか」

「自律神経の病気は難しいし、かといって、命に関わることがないので、対応してくれる病院は少ないです。頭痛やめまいなんかも、ちゃんと診られるところはあまりないですよね。

 ネットで、起立性低血圧と脳神経内科、あるいは総合内科でキーワード検索してみてください。

 横になっているときと立ち上がったときの血圧の変化を検査してもらえば、起立性低血圧かどうかが分かって、治療法も見つかると思いますよ」