これはなぜなのか。さらに推論を推し進めていくと、どうやらトイレのクオリティーに関係がありそうだという仮説が浮かび上がってきた。

 A駅のトイレは長年使われてきた古びたトイレであり、見た目もそれなりで、中には芳香剤とトイレ独特のきついにおいが混ざりあって立ち込めている。

 一方、B駅のトイレは近年改装されたばかりらしい近代的な佇まいで、キレイであり、においらしきものが特に感じられない。

 すなわち、小用便器を前にして唾を吐きたくなる衝動は、トイレのにおいや清潔さに起因するものではないか。

 トイレがくさくて不潔だと唾が自然とこみ上げてくるのではなかろうか。唾がこみ上げてきても吐き気につながるその唾をなんとなく飲み込みたくないので、「ではちょうどいいから」と小用便器に唾を棄てるのではあるまいか。これが、何割かの男性が「小用便器に唾を吐く」、その理由ではあるまいか。

 あくまで筆者が勝手に導いただけの単なる仮説なので正当性は保証できないが、自身が癖を持つ身としてはこれ以上しっくり来る結論はないようにも思える。

 ひとまず謎が解けた気がして非常に爽快である。また、本稿を書く前に編集部に「男性が小用便器に唾を吐く心理」で企画出しをしてOKをもらったはいいが、男性の排泄に関して調べ、これについて長々と何事かを書き連ねるのを想像したら憂鬱(ゆううつ)になってきて、愚かな企画を出してしまった自分を呪ったが、その記事の執筆もようやく終わりに差しかかっていて、それにも爽快感がある。うれしい。

 今回は毒にも薬にもならないというか、やや毒にしかならないようなテーマについて調査した私自身と、そして何より最後まで付き合って読んでいただいた読者諸氏に心から「お疲れさまでした」と申し上げたい。