私たちの仕事や生活の中にある膨大な量の物的資産や、経験と勘に頼って行われてきたアナログプロセスが、さまざまな領域でデータ化され始めている。これらのリアルデータはビジネスや社会をどのように変えていくのか。企業や個人はどう対処すればよいのか。東京大学・森川博之教授の最新刊『データ・ドリブン・エコノミー』(ダイヤモンド社)より内容の一部を公開する。

デジタル革命は次のステージへ突入

 いま私たちは、データが経済・社会の変革をもたらす新しい時代の幕開けに立ち会っている。

 ここ数年、デジタル変革、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ビッグデータといった言葉が世間を賑わせているが、これらの背景にあるのが「21世紀の石油」とも言われるデータだ。インターネットに接続されたスマートフォンやセンサなどのさまざまな機器が生み出す膨大なデータが、あらゆる産業や社会を変えようとしている。

 インターネットが普及し始めてから現在までの約20年間にわたるデジタル革命は、ネット上の「ウェブデータ」が主役だった。ウェブ閲覧履歴、ウェブ購買履歴、画像・動画データ、SNSの個人関連データなどが「情報爆発」をもたらし、これらのウェブデータをうまく集めた企業が競争優位に立つことができた。

 しかし、これからはリアルな世界の「リアルデータ」が主役になる

 私たちの仕事や生活のなかにはデジタル化されていない膨大な物的資産があり、経験と勘に頼って行われてきた膨大なアナログプロセスがある。いま、こうしたリアルな世界からデータを集める動きが、さまざまな領域で活発になりつつある。

 それを可能としたのが、情報通信技術(ICT)の進展だ。無線通信、センサ、クラウドなどの技術が成熟し、あらゆるモノが低コストでネットに接続されるようになった。つまり、アナログ情報をデジタル化するためのインフラが整ったということだ。そして、データの収集・活用を支える強力なツールとなっているのが、IoTやAIである。昨今、デジタル変革の必要性が叫ばれるようになったのも、こうした状況の変化が背景にある。