ティム・クック
3月には、アップルの動画配信参入や定額ゲームサービスなどを発表したティム・クック Photo:AP/AFLO

2011年にカリスマ経営者ジョブズが死去した時、多くの専門家は「アップルはこれから駄目になる」と予測した。ところが、ジョブズの後を継いだCEOティム・クックはアップルの売り上げを伸ばし続け、約30兆円のキャッシュを積み上げ、iPhoneの累計販売台数は15億台を超えた。

ジョブズ亡き後のアップルでは一体何が起こっていたのか。そして、ティム・クックはジョブズを超えるのか。『アップル さらなる成長と死角』の著者であり、アップルでの勤務経験を持つ竹内一正氏がその舞台裏を3回にわたって解き明かしていく。

【第1回】「アップルがジョブズを失っても史上初の1兆ドル企業になれた理由」こちら
【第2回】「iPhoneが成功した3つの理由、もしアップルが自ら製造していたら?」こちら

「ポストiPhone」は何か?

 前回の記事の中で私は、iPhoneが売れている間に、ポストiPhoneを生み、育て、新たな市場を作るべきだと述べた。

 では、ポストiPhoneの製品とは何だろうか?

 動画、ゲーム配信、クレジットサービス、ソフト販売のAppストアなどソフト事業を挙げる専門家も少なくない。だが、それらはハード端末あってのサービスであることを忘れてはいけない。アップルの事業の中核にはやはりハード端末が必要だ。だからこそ、ポストiPhoneはApple Watch(以下、アップルウォッチ)であると言いたい。そして、それこそがティム・クックの製品と呼べるものだ。

 振り返れば、iPodもiPhoneも“ジョブズの製品”だった。「iPhoneがないと、生活に困る」というユーザーが多く現れ、社会現象化した。

 一方、アップルウォッチは2015年に登場したが、「なくても困らない製品」の座に不本意ながら居座っていた。しかし、「アップルウォッチのおかげで命を救われた」という人が2017年にニューヨークに現れると、状況は変わっていく。アップルウォッチの心拍センサーが異常を見つけ、利用していた男性が病院に駆け込むと「肺に血栓が見つかった」と医師から告げられ驚いた。ただちに超音波治療と血液の粘度を下げる注射が施され、この男性は大事には至らなかった。