iPhoneシリーズの新モデルの発表を行うティム・クックCEO
iPhoneシリーズの新モデルの発表を行うティム・クックCEO Photo:AP/AFLO

創業者が、長期的に経営者として立ち続けている企業は、日本にも世界にも数多くあります。ただそれは、たった1人のリーダーに企業のすべての命運がかかっている非常にリスクの高い状況でもあります。企業が継続的に勝ち続けるために、いかに後継者を育てていくのか。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、人事が事業を支える企業を紹介していきます。今回はアップルを取り上げます。

1990年代はアップルにとって瀕死の時代だった

 100兆円を超える時価総額の企業は、世界に1社しかありません。それがアップルです。

 しかしアップルは常に勝者だったわけではありません。ほんの10年前まで、ここまでiPhoneが世界に普及するとは誰も考えていませんでした。さらに20年前に至っては、まさかアップルが電話を売る企業になっているとは思いもしませんでした。

 ちょうど世界がインターネットバブルに沸いた1990年代、アップルは瀕死の状態でした。今でこそ世界でも比類ない存在の企業となりましたが、その歴史は苦闘の連続だったのです。

 1976年にスティーブ・ジョブズ氏と、スティーブ・ウォズニアック氏の2人によって創業されたアップルは、順調に事業を拡大していました。80年代に入り、今でもアップルを象徴する製品の一つであるMacこと「Macintosh」が開発され、スティーブ・ジョブズ氏の美しいデザインへのこだわりが詰まった製品が世に送り出されました。

 しかし残念ながら、Macintoshは市場に大きく受け入れられることなく、スティーブ・ジョブズ氏はアップルを追われることとなりました。創業者を欠いたアップルはさらに低迷を続けることとなり、90年代に入ると、マイクロソフトのWindows95が世界を席巻し、アップルは身売りの話が頻繁に聞かれるほどの危機を迎えます。

 1997年、アップルに復帰したスティーブ・ジョブズ氏は、2001年にiPodをリリースして、コンピューター市場から音楽プレーヤー市場への進出を果たしました。iPodは単なるハードウェアにとどまることなく、iTunesによる音楽や映画などメディアコンテンツの販売とセットとなることで、それまでCDを中心としていた音楽市場そのものを覆し、一気に市場のリーダーとなりました。

 さらに、2007年にリリースした、iPhoneによりスマートフォン業界に進出し、アップルの復活は完全なものとなりました。

 どの製品においても、高いデザイン性という強みを応用し、異なる市場に次々と進出することで苦境を脱したアップルは、まさにイノベーションを体現した企業の一つであり、そのイノベーションを率いたリーダーが、スティーブ・ジョブズ氏なのです。