ところが、売上高10億円も目前というところでバブル崩壊、売り上げは激減する。新製品をいろいろと開発はするものの、柱となるようなものが出なかった。会社は窮地に立たされる。

わが社はこれで勝負!
撹拌は、高度な材料の研究開発の成否を握る。時間との勝負でもあり、化学、電子、医療など多岐にわたる分野で、シンキーの製品は重宝されている。写真は、特に最近要望が強いナノ材料分野で使われる「ナノ粉砕器」

 ここで起死回生の製品となったのが、自転・公転方式のミキサーである。前述の通り、当初は歯科業界用だったが、実はこれには想定を超えるニーズがあった。転機は、工場で使われるハンダへの応用だ。気泡が原因の不良品発生に悩む自社の工場で使ってみたところ、問題が一気に解決。同様の悩みを抱える工場から引き合いが殺到したのだ。さらに、顧客の要望に応えて改良と開発を重ねるうちに、ますます製品は高性能に、またラインナップも多彩になっていった。今では世界中の研究開発、製造現場で、シンキーのミキサーが使われている。

 石井は、「弊社の責任は非常に重い」と語る。「日本の製造業は、これから高度な素材、材料の供給で生きていかねばならない。最先端の研究開発、製造に、世界最高性能のミキサーを供給し続けていくことで貢献したい」。目指すのは、「感動、感激してもらえる製品開発」だ。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)


いしい・しげはる/1940年生まれ。佐賀県出身。71年にシンキー創業。社名のYはソニーにあやかった。「脳をフル活動させれば不可能も可能になる。運も人との出会いも脳の動かし方次第」が信念。

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