――南極に向けて、どんな準備をされたのですか?

 自分の活動をアピールする意味もあり、人力車で日本全国を8ヵ月かけて回りました。最初に、全部のスケジュール決めておき、この日は国道何号線を通って何キロ進み、宿泊先は道の駅で寝るなど、日程をかなりきっちり決めておきます。この日程を基に、取材を入れたり、アポ入れたりしているのでスケジュールを遅らすことはできない。特に取材のときは死ぬ気でそこに行きます。人力ですから必死です。

 今までお世話になった会社とかにもアポイントを入れておきます。人力車を引いていくと、「人力車でホントに来た!」って、すごく感動してくれます。

――エクセルで日程を組んでいるのですね。

 人から見ると、僕の人生って自由気ままに見えると思うんですけど、そうじゃない(笑)。ホントに休みもないし、お金もないです。全部、冒険に使っちゃうからですが…。

プロの冒険家は
「世の中の流れを見なければいけない」

冒険を成し遂げるには体調管理が大事
「冒険を成し遂げるには体調管理が大事」と語る阿部さん Photo:M.O.

――風邪もひけないですね。

 体調を維持するのは、無理をし過ぎないということに尽きるかなと思います。もちろん、冒険をやり遂げるためのトレーニングや体力作りだけでなく、万が一の時にどうすべきかは何度もシミュレーションして、対策を講じていますが、その上で無理をしないことです。

 あとは、身体をしっかり回復させるために、必要な食べ物を食べるなど、体調管理は計算してやらないといけません。

――冒険家だからといって、自由気ままに生きているわけではないんですね。

 はい。プロの冒険家は「世の中の流れを見なければいけない」と、恩師の大場満郎さんから学んだことは大きかったですね。大場さんは京セラの稲盛(和夫)さんらが応援していましたが、南極冒険の時に1億円集めました。見た目、普通のおじさんなんですけどね(笑)。

 大場さんは、世の中の流れを見るために、毎朝、新聞を読んだりニュースを見ていました。あとはお礼状を欠かさない人で、僕もいただいた名刺には全部お礼状を書くようにしています。

 やっぱり、人から応援される人というのは、そういうことを大事にするんだろうなと思いますし、僕の中で恩師に会ってそういう態度を見られたことが幸運でした。冒険は決して無謀なことではなく、ちゃんと世の中のことを見ながらやるべきです。

 南極点というのは、冒険を志す人が絶対憧れて行きたいところですけど、皆それがかなわないんですよ。なぜかというと、実力が必要なのはさることながら、多額のお金が必要です。さらに僕ができない部分をサポートしてくれる支援者の存在は不可欠です。そうじゃないと、冒険に集中できないですし。

 あと、世界の冒険家と交流していて感じるのは、海外では多くの資金を集めた冒険家を評価します。社会で求められたからこそスポンサーを集められたのだと。

 ところが日本では、スポンサーを集めるのはよしとしない風潮が若干あります。「清貧の思想」は否定しませんが、スポンサーなしでは大きな冒険は無理です。「世界の冒険家の基準」が日本でも広まれば、たくさんの冒険家が生まれてくると思います。