足元、世界的に長期金利が一段と低下している。10年物国債利回りは日本が0.82%、米国が1.45%、ドイツが1.17%にまで大きく低下した。この主因は二つある。一つは長引く欧州債務問題、もう一つは超金融緩和政策の常態化である。
欧州債務問題は3年目に突入したが、先が見えない状態が続いている。最近ではギリシャのユーロ離脱観測とスペインの大手銀行バンキアをめぐる不透明感が、市場全体のリスクオフの原因だ。日本のみならず米国・英国・ユーロ圏で政策金利が実質ゼロあるいはそれに近い水準となっているほか、中央銀行による国債買い入れなどが続いていることも、債券に対する買い安心感につながっている。
こうした理由で長期金利は低下しているが、この金利低下は行き過ぎと考えている。例えば米国・英国・ドイツでは10年物国債利回りが前年同月比の消費者物価上昇率を下回る。これはインフレを考慮した実質ベースでは国債の価値が目減りすることを意味する。
昨年4~9月の日本の都市銀行の資金調達原価は0.85%、現在の10年物国債利回りとほぼ同じ水準。これ以上利回りが低下すれば、都市銀行にとって逆ザヤになる。実際2008年、10年はこの水準で利回りが下げ止まった。
このように金利低下は既に行き過ぎている。きっかけがあれば、反転上昇するだろう。そのきっかけとして有力なのは欧州での政治や政策面での動きとみている。