総務省は、4Gまでは「人口カバー率」を携帯各社に求めていたが、5Gでは人口の少ない地域の普及も促し、日本全国を10キロメートル四方の4500区画に分けて、その区画をいかにカバーするかという基準を採用している。

「5G基盤展開率」と呼ぶこの基準によると、NTTドコモとKDDIの5年後のカバー率が90%超なのに対し、ソフトバンクは64%の計画にとどまる。新規参入の楽天のカバー率の56%に迫られるほど低い水準だ。

 総務省の発表によると、5G基盤展開率は周波数割り当て審査の重要項目の1つ。大手3社の中でソフトバンクの希望が通らなかったのは、これが大きく影響した。

BtoBより個人狙うソフトバンク

 だが、ソフトバンクの宮川潤一副社長は「今回の周波数割り当てでそれほど背伸びする必要はない」と意に介していない。一見するとエリアカバーが不足しているように見えるが、「われわれがターゲットにしているのは、21年末までに90%を超える人口カバー率」(宮川潤一副社長)と強調する。総務省が求めた4500区画を埋めていく設備展開よりも、あくまで「人の利用」にこだわって5Gネットワークを構築する方針だ。

 ソフトバンクが具体的にどの地域からエリア展開するかは不明だが「5Gの端末(スマートフォン)は21年頃に広がる」(宮川副社長)と想定しており、それに向けて人口密集地からいち早く電波を届けていくことを考えているもようだ。

 5Gでは、地方や山間部の工事現場や工場施設などBtoB用途が増える。総務省が従来の人口カバー率ではなく、人のいない地域も含めて均等にカバーを求めたのはこのためだが、それに素直に応じて設備投資金額を積み上げたのがドコモとKDDIだった。これに対してソフトバンクは「今後5年はまだまだスマホが主流」(同)とみて、今回の周波数割り当ての範囲では、個人ユーザーの普及を優先する。

 同時に、宮川副社長は、5Gの設備投資について「日本政府と議論した結果、期待に添える状態になっている」と述べ、中国製の通信機器を導入しないことを暗に認めた。ソフトバンクは4G通信網の構築の際には、格安で性能が高いとされるファーウェイ機器を大量に導入したが、5Gではそれを使わずにいかに効率的なネットワークを構築するかがカギとなる。

 一方の楽天のネットワークの実力は未知の部分が大きい。今年10月までに4Gの仮想化設備をゼロから立ち上げて、それをソフトウェアで5Gにアップデートすることでエリアカバーを広げていく考えだ。

 次世代通信の電波を、どのタイミングで誰に届けていくか。5Gの料金水準も左右する設備投資に、携帯キャリア各社はしのぎを削ることになる。