さほど話題になっていないが4月8日に公表された国際通貨基金(IMF)の春季世界経済見通しによれば、中国の経常収支が2022年には暦年ベースで赤字に転落し、その額も66億ドルになると予想されている。
金融危機発生から10年あまりで世界最大の黒字が丸ごと消失するという変化の大きさには驚きを覚える(グラフ参照)。同じ期間に一貫して高水準を維持し、今や世界最大の経常収支黒字国としての地位を確立したドイツとは対照的である。
トランプ米政権は通商政策上、相変わらず中国を目の敵にしているが、これは貿易収支黒字(正確には対米黒字)の大きさを捉えたものだ。巨大な経常収支黒字の減少は不均衡の是正の進展、言い方を変えれば中国が内需主導型経済へ移行している証左として前向きな評価を与えられるかもしれない。
だが、金融危機後の外需減退を受けて中国政府が国内投資を中心とする大規模な内需刺激策を実施し、結果として過剰債務(不良債権)が積み上がったという評価もある。
理論上、対外経済部門の収支尻が大きく変化する背景には、対内経済部門の収支尻が大きく変化したという事実もあることは忘れてはならない。