連日大盛況が続く東京スカイツリー。これまで、自立式鉄塔としては日本最高峰を誇っていた東京タワーへの注目は、スカイツリーブームの陰に隠れてしまった感がある。日本の経済発展のシンボルとして、開業から約50年の長きにわたって愛されてきた東京タワーだが、最近では「古き良き昭和の象徴」として、懐古的なムードで語られることも多くなっている。スカイツリーに王者の座を奪われた東京タワーが、苦境に陥る可能性は高いのだろうか。関係者に話を聞くと、最大のライバルの開業をも自らの追い風にしてしまう東京タワーの恐るべき“底力”が見えてきた。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)
スカイツリーブームの陰に隠れた
東京タワーは、この先大丈夫なのか?
5月22日、東京の下町、墨田区の押上に東京スカイツリーが開業した。タワーの展望台に入場できる予約制チケットは、受付け開始からあっという間に完売。開業当日はあいにくの雨だったが、最新鋭の技術を集結させた世界最高峰の電波塔は、華々しいデビューを飾ったと言えよう。
順番待ちのスカイツリーに登ることができなくても、その根元に同時オープンした商業施設「東京ソラマチ」を目指すカップルや家族連れも多い。スカイツリーとソラマチの来場者数は、開業5日目で早くも100万人を突破。日を追うごとに来場者は増え続け、スカイツリー一帯は土日ともなれば足の踏み場もないくらいの人々で埋め尽くされている盛況ぶりだ。
こうしたスカイツリーブームの一方で懸念されるのが、もう1つの電波塔「東京タワー」(日本電波塔)の先行きである。
東京タワーは、1958年(昭和33年)に日本で最初の電波塔として開業。翌年にはテレビ各局の電波発射が開始された。全長333メートル、大展望台まで150メートル、特別展望台まで250メートルというこのタワーは、スカイツリーが登場するまで、自立式鉄塔としては日本最高峰を誇っていた。オレンジと白を組み合わせた斬新な外観と美しいシルエットは、日本の経済発展のシンボルとして、開業から約50年もの間、日本人に愛され続けてきた。