世界一のタワー「東京スカイツリー」が今日、オープンする。同時に、タワーを含む複合商業施設「東京スカイツリータウン」も開業し、墨田区に初めての巨大観光地が誕生。ツリーと周辺施設への来客数は年間2500万人、地元への経済効果は880億円と見込まれている。しかし、スカイツリーのお膝元である墨田区の商店街は、かつてないほどの期待とともに、ただならぬ不安をも抱えていた。(ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
最寄り駅の乗降客数は倍増も
地元商店街では期待と不安が交錯
「おかげ様でスカイツリーが伸びるにつれてお客さんの数も増えてきましたよ。でも、開業したら中には300店舗以上ですからね。(ツリーの)外にまで人が来てくれるかどうか…。神のみぞ知るって、商店街のみんなが不安がってますよ」
こう話すのは、墨田区来訪者への情報提供をする「おしなりくんの家」でボランティアスタッフとして働く女性だ。
墨田区は、昔から「ものづくり」の街として発展してきた。「平成22年度 工業統計調査」(東京都)によれば、製造業の事業所は大田区、足立区に次いで23区中3位で、1032ヵ所を数える。小規模な事業所が多いが、付加価値額(1566億円)も3位とその技術力は高い。だがそのためか、これまで観光地としての評価は目立たなかった。スカイツリー建築中の2009年に行われた「地域ブランド調査」によると、墨田区の観光意欲度は全国1000の市区町村中260位だ。
とはいえ、スカイツリー効果で、翌10年には観光意欲度206位、情報接触度は73位から28位、認知度も84位から61位に上昇した。実際、10年4月に開館し、ツリー周辺の情報を発信してきた「東京スカイツリーインフォプラザ」には、今月6日の閉館までに57万人が来場。さらにツリー最寄り駅の乗降客数も、03年と10年を比較すると、東武伊勢崎線・業平橋駅(現・とうきょうスカイツリー駅)は770万人から1500万人へ、半蔵門線・押上駅では1100万人から2200万人へと倍増した。
スカイツリーをきっかけに観光客が激増し、いいことづくめに見える墨田区だが、実際には地元のみならず、周辺からも冒頭の女性のような不安の声が少なからず聞こえてくる。商店街などを含めたまちづくりに詳しい、東京23区研究所の池田利道所長も、そうした危惧を表明する一人だ。
「開業後には2つの懸念があります。1つは、観光客の多くがスカイツリータウンだけで満足して帰ってしまうのではないかという点。もう1つが、スカイツリーを見終えた観光客が、お隣の台東区にある超メジャー観光地・浅草に流れてしまう可能性が高いことです」