近い将来、AIやロボットが多くの仕事を代替すると考えられている。そのとき人間に必要なのは、「AIにできない仕事をする」能力だ。脳科学者の茂木健一郎氏は、これからの時代には「自分の頭で考えられる力=地頭の良さ」が重要だと語る。茂木氏の最新刊『本当に頭のいい子を育てる 世界標準の勉強法』から一部を抜粋して、自分の頭で考えられる力を育む「探究学習」を紹介する。
開成にガリ勉はいない
脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。
東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。 写真:片桐圭
東京都の西日暮里に学舎を構える中高一貫の私立男子校、開成中学校・高等学校(開成学園)は、東大合格者数日本一を誇る名門中の名門です。
開成学園では、いわゆる探究学習やアクティブラーニングと銘打った授業はありません。教員一人ひとりが教材と授業形式を自由に選び、工夫するので、結果的に探究学習やアクティブラーニングを行なっている場合もあります。そうなると、生徒たちが自分で考える力や問題を探究できる力を十分に育むことは難しいのでしょうか。
そうではありません。探究心を育むのは探究学習という授業だけではないからです。
校長の柳沢幸雄先生を訪ね、開成学園とはどんな学校なのかをお聞きしました。柳沢先生は「開成という学校は、学校がこうしましょう、といって動く学校ではないんです。生徒が主導になって動き、学校はそれをサポートするというのが基本的な姿勢です」とおっしゃっていました。
開成学園では、通常の授業や、運動会、学年旅行、文化祭などの行事を通して生徒の興味や好奇心を刺激していきます。このことを柳沢先生は「餌まき」とおっしゃいました。