池田 清 著
(中央公論社/1981年)
1945年11月、日本海軍は73年9ヵ月の歴史に幕を下ろした。世界第3位の海洋国家だった日本は名実共に滅び、著者は20歳の海軍中尉としてこの日を迎えた。敗戦後、歴史研究を志して現代史を専攻したのは、戦友の死、海軍という組織と日本、さらには戦争の意味を問い直すためだった。
海軍は、極東の非白人小国家だった日本を国際政治の檜舞台に引き上げるのに貢献したが、結果的に日本を破滅の淵に引きずり込む。強硬な姿勢の陸軍に引っ張られる格好で、海外での知見があったはずの海軍は日中戦争から太平洋戦争に突入した。本書は、海軍の歴史的責任を検証し、なぜ日本国民が負けると分かっていた道を選択してしまったのか、その本質を解き明かしてくれる。
(元アラビア石油取締役、オイル・アナリスト 庄司太郎)