――インキュベイトファンドのみでなく、起業家・投資家に開かれた場になっている。

和田 私たちが意識的に役割を変えたというより、業界トレンドの移り変わりが大きな要因だと思います。米国でも日本でも、アプリがブームだった2013年頃は、あまり高額の資金を調達しなくても市場に打って出ることができた。一時期のアプリは配信さえできれば、成功可能性があったからです。VCも1社ごとの投資額よりも社数を強く意識する傾向にありましたし、数百万円程度の調達でもメディアに取り上げられていました。

 しかし数年もすると、宿泊産業を対象にしたAirbnbや交通産業を対象にしたUberなど、ウェブによって既存の巨大産業を置き換えようとするサービスが増えてきました。アプリの枠を超えたサービスは開発には多額の資金が必要になります。さらにエンジェル投資家やコーポレートベンチャーキャピタル(注:事業会社企業が設立するVC)などの台頭で出資者も増加。こうした要素が重なったおかげで、いまでは数億円規模の調達も日常茶飯事になりました。

 現在の起業家は、昔に比べればある程度の金額での調達は簡単に受けることができる。そんな中で単なる出資だけでなく、投資先をユニコーン企業に育てる方法を模索することが我々の使命だと考えています。

東南アジアやインドなどのスタートアップにも投資

――海外展開について教えてください。

和田 海外展開については、東南アジアやインドなどで順次活動を広げています。

 そもそもVCビジネスはローカルビジネスの側面があり、現地でエコシステムに土着できるパートナーに主体的に動いてもらう必要があります。加えて、インキュベイトファンドが国内で重視している投資哲学でもある、「シード期への投資にフォーカスすること」と「投資後の経営支援を徹底すること」、の二点は海外展開においても重視しています。海外市場に全身で飛び込み現地の起業家や投資家と関係を積み上げるコミットメントがあり、投資哲学を共有できるパートナー人材と出会えた場合、彼らへの支援を通じて拡大してきました。

 東南アジアでは2015年にKKファンドが、インドでは2016年にIncubate Fund Indiaが活動をスタートするなどしています。いずれの市場も一筋縄で行かないのはわかっていますが、現地で努力する彼らへ対し、日本のエコシステムとの連携を通してリソースやネットワーク面からのサポートを我々が担うことで、成功事例が生まれてきつつあります。