『週刊ダイヤモンド』4月6日号の第1特集は「スタートアップ4.0」です。3月に創業20周年を迎えた日本を代表するIT企業、ディー・エヌ・エー(DeNA)。創業者の南場智子代表取締役会長に、足元で起きているベンチャーブームへの思いを聞きました。(本記事は特集からの抜粋です)

DeNA代表取締役会会長の南場智子氏なんば・ともこ/1962年4月生まれ。米ハーバード大学大学院修了(経営学修士)。86年、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。96年、同社パートナー(役員)に就任。99年、同社を退社してディー・エヌ・エー設立。2017年3月より現職 Photo by Masato Kato

──DeNAは、渋谷がビットバレーと呼ばれていた最初期に設立しましたが、日本のベンチャー史と併せて、回顧からお願いします。

 あっという間だったともいえるし、逆に長かったような気も。不思議な感じがしますね。1999年の当時は、私もひょんなことから起業したので、ベンチャーブームが起きていることさえ知らなかったんですよ。でも、あのころに結構な数のベンチャーが立ち上がりましたよね。ヘラクレス(旧ナスダック・ジャパン)やマザーズといった新興企業向けの株式市場もできました。

 その前の94年にNetscape(一世を風靡したウェブブラウザー)が出てネットが民主化され、米国シリコンバレーで起業が相次ぎました。その波が98~99年に渋谷、東京に押し寄せたわけです。

 ところが、(ITバブル崩壊で)2000年にドアがピシャッと閉まり、バタバタとつぶれました。その多くはベンチャーキャピタル(VC)からお金を入れていましたが、特に日本のVCは2年以内に上場できなければお金を返す、というような契約が多かったんですね。私はそんな契約にサインをしなかったのですが、それも本当に運が良かっただけなんです。

──当時、DeNAにも逆風が吹いたのですか?

 うちも上場の準備をしていたのですが、準備のときはこんなぺーぺーの企業に証券会社の役員が来られて「うちを主幹事に」と言っていたのに、(バブルがはじけると)「駄目になった」と電話一本です。違う形で増資をしなければならず、金策に苦労しましたね。