CHINA DAILYアメリカが中国に対して関税引き上げを予告した後、中国メディアは速報を出した程度で、ほぼ「沈黙」を守った。習近平の心中とは Photo by Yasuhisa Tajima

米中貿易戦争が勃発か
当初、中国メディアは「沈黙」

 5月5日、アメリカが輸入する中国製品2000億ドル分に対する関税を10%から25%へ引き上げることを予告してから、一時は小康状態になっていた“米中貿易戦争”が再燃した。アメリカとの貿易戦争は昨年より続いており、中国は当初強気の姿勢を見せていたが、関連産業が影響を受けて国内経済が減速したため、アメリカを必要以上に刺激しなくなった。

 そうしたなかで9日にアメリカが追加関税を発動し、さらに第4弾の追加関税の発動も視野に入れているため、“米中貿易戦争”がいよいよ激しくなろうとしている。それに対し、習政権はどのように動くだろうか、外交面から考えてみたい。

 アメリカが関税引き上げを予告した後、中国メディアは速報を出したくらいで、ほぼ「沈黙」を守り、トランプ政権を批判するような論評を掲載しなかった。

 6日の中国共産党機関紙『人民日報』の一面は、習近平の「三農」問題の講話抜粋集の出版の記事などで、貿易摩擦に言及したものはなかった。翌7日の同紙は「中国経済は強靭性を十分に有している」という評論記事が一面に掲載されていた。記事自体はアメリカとの貿易摩擦には直接言及していないが、5月の4連休の経済パフォーマスが良好であったことについて、中国経済は十分強靭であると述べている。

 ただ記事の最後には、「中国の経済発展は十分に強靭であり、(中国経済の強靭性は)外部からの衝撃に対処し、質の高い発展を実現するための空間を与えた」と述べている。「外部からの衝撃」には色々な意味が入っているが、アメリカとの貿易摩擦もその1つだ。

 その後は「中国共産党がなぜ良いのか」「中国の特色ある社会主義がなぜ良いのか」といった記事が理論面に掲載されていた。これらの記事は米中貿易摩擦について直接言及していないが、時期を考えると全く関係ないとは言えない。