【社説】トヨタ巡るトランプ氏の錯誤Photo:iStock/gettyimages

 中国、キューバ、ロシア、アルカイダ、イスラム国(IS)、トヨタ自動車、北朝鮮、ヒズボラ、イスラム革命防衛隊。この中で、米国の国家安全保障上の脅威と位置づけられていないのはどれか。

 「トヨタ」と答えた人は、トランプ政権で働いてはいけない。同政権は先週、「米国資本」の自動車や自動車部品以外は国家安全保障の脅威になると宣言した。ホワイトハウスが声明の中で、日欧との貿易交渉中は自動車への追加関税を180日間猶予すると発表したことを受け、金融市場は安堵(あんど)感に包まれた。しかし、「米国資本」という文言はいやらしい非論理的な注釈であり、懲罰関税が課されたり、対米投資が統制されたりする可能性さえある。

 トランプ氏は米商務省が提出した報告書に基づいて、次のような主張を展開した。「米国人が所有する生産者による研究開発投資の遅れはイノベーション(技術革新)を弱体化させ、その結果、米国の国家安全保障を損なう恐れがある」ため、「輸入を減らすことで国内の競争条件を改善する必要がある」

 トヨタやホンダ、フォルクスワーゲン(VW)、メルセデス・ベンツ、マツダ、BMW、スバル、日産、起亜、現代がいずれも米国で自動車や部品を生産したり組み立てたりしていることはお構いなしだ。これらの企業は米国の複数の州に500近い施設を持ち、13万人の米国人を直接雇用している。ボルボはサウスカロライナ州に4000人雇える工場がある。トランプ氏の論理で言えば、米国の安全保障にとって重要な自動車メーカーはフォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、テスラだけだ。フィアット・クライスラーさえも、主要株主はイタリア人のため、含まれない可能性がある。