ドナルド・トランプ米大統領の政権下で常に懸念されていた最大の経済的リスクは、同氏の貿易への強いこだわりが、税制改革と規制緩和の効果を打ち消してしまうことだった。過去2年間、トランプ氏は自らの保護主義的衝動の最悪の部分を、総じて抑制してきた。しかし、同氏が2期目の大統領任期を目指す中で、今われわれが目にしているのは、タリフマン(関税の男)の解き放たれた姿だ。同氏がどこで立ち止まるのかは、誰にも分からない。それは、経済にとって、そして恐らく自身の再選にとっても好ましくないことだろう。トランプ氏の中国との貿易交渉は決裂し、双方の非難合戦は激化している。米国は、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)による米国製品の調達を停止させた。中国は、米国の多くの産業にとって不可欠なレアメタル(希少金属)の輸出停止をちらつかせている。何週間か前には目前と思えた米中の貿易合意は、今ではたとえ実現するとしても何カ月も先のことと見なされるようになった。また、外国製の自動車に25%の関税を課すというトランプ氏の脅しは、欧州と日本を覆う暗雲となっている。