使い勝手のためにはスペックを下げる選択だってある

――新製品開発では何を重視しますか。

 技術力に自信がある会社は、出力値だったり、モーターの回転速度だったり、スペックで比較することが多い。日本のメーカーはそれが得意ですね。

 大切なのは、単に能力を上げるだけでなく、実感値に翻訳すること。ユーザーが使うときの感覚を、どうやればスペックに反映できるのかを重視します。必要以上にカタログ上の機能を上げるのではなく、使い勝手のためにはスペックを下げる選択だってある。職人がどうやれば楽に作業できるのかを考えて開発します。

 幹部たちには、「月に1回は現場に行こう」と話しています。現場に行けば、職人の工具の使い方だけでなく現場での過ごし方も垣間見ることができる。生の声を聞いたり、車にどんな道具を積み込んでいるのか、休憩時間に食べるお菓子のメーカーはどこかなど、些細な情報にもアンテナを張ったりします。

――電動工具メーカーで国内1位のマキタ(19年3月期の連結売上収益は4905億円)は製品ラインナップを拡充し、職人以外の一般ユーザーも親しみがあるガーデニングやコーヒーマシンなども開発しています。

 工機HDはプロ向けを重視しています。職人の世界は、親方が愛用しているブランドを弟子も引き継いでいくケースが多く、一度愛用するとなかなか他のブランドに鞍替えすることはありません。だからこそ、新ブランド「ハイコーキ」を圧倒的にプロユーザーに気に入ってもらうことが重要です。

 建設業界は現在、人手不足が深刻で、若い人が現場仕事をしなくなっている。日本だけでなく、米国や欧州でも同じ状況です。職人の仕事は、続けていくうちにいくらでも深めることができるので、メーカーとしては電動工具自体の技術を磨き、ユーザーにモノづくりの仕事を魅力的に感じてもらえるようにしていきたいです。