「キムリアは“生きた薬”。
コスト構造を一つひとつ分けるのが非常に難しい」

――厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)では、キムリアの薬価について、製造総原価の詳細を把握しないと適正な薬価を判断できないのに、メーカーから提供される情報が少なくて原価の内訳がブラックボックスになっているとの批判がありました。キムリアに限った話ではありませんが、企業買収や開発品買収のコストも製造総原価の中に入っているなら、それはおかしいという声も上がっています。製造総原価の内訳を今一度うかがいたい。

 日本の医療制度、薬価制度の枠組みで最も適切な価格を付けてもらえるよう、必要な情報を透明性を持って提供することにわれわれは努力をしました。

キムリアCAR-T細胞療法は患者自身の体内にある免疫細胞の力で異物のがんを攻撃するがん免疫療法の一種。「キムリア」はがん細胞の表面に発現するたんぱく質「CD19」抗原を標的として認識し、がんを攻撃するよう遺伝子が加えられている。適応対象は、一部の白血病とリンパ腫(25歳以下で再発または難治性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病、再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫) 写真提供:ノバルティス ファーマ

 キムリアは“生きた薬(living medicine)”。生きた細胞を加工するCAR-T細胞療法はとても複雑な薬です。患者の白血球を日本で採取して凍結し、米国にあるグローバルの製造施設に送る。解凍して加工処理を施し、再び凍結して日本に送って、また解凍する。さまざまなプロセスがあって、コスト構造を一つひとつ分けるのが非常に難しい。コスト自体に所有権、私的な部分があるので、開示できないというのもあります。

 世界で注目されている「バリューベースドプライシング(価値に見合った価格)」という概念が将来の方向性であるとしたら、製造コストなり買収コストなりをボトムアップで積み上げるのとは別の基準や要素で見ていくことになります。例えば、臨床(治療)の質、患者のQOL(生活・生命の質)、治療から受ける恩恵、社会や制度に対する長期で見たコストセービングなどですね。