もう治療法がないがん患者に効く薬を見つける「がん遺伝子検査」が安くなる?Photo by Seiko Nomura

がん医療の三大療法である手術、放射線、薬のいずれにも大きな変化が起きている。ロボット支援手術で健康保険適用のがん種が一挙に増えた。放射線治療の一種、粒子線治療で前立腺がんの保険適用が認められた。薬物治療では2014年に発売された免疫治療薬「オプジーボ」の適応対象がどんどん広がり、価格がどんどん下がっている。『週刊ダイヤモンド』3月17日号の第1特集「大衆化する高額・最先端手術 がん医療の表と裏」では激変するがん医療の内情を明らかにしており、そのオンライン編集版を複数回にわたってお届けする。今回のテーマは、もう治療法がないがん患者に効く薬を見つける「がん遺伝子検査」。治療に結びつけるための検査において、技術革新が進んでいる。(「週刊ダイヤモンド」編集部)

 あらゆる治療をやり尽くし、検討し尽くし、もう治療法がない状態に陥った患者は絶望のふちに立たされる。そんな患者たちに効く可能性のある薬を見いだす画期的な検査法がある。しかも、今夏以降、より安価に受けられる可能性が広がる。

 この検査は「網羅的がん遺伝子検査」と呼ばれる。患者のがんが、どの遺伝子に異常があって発症したかを調べるものだ。

 なぜ、この検査が安くなる可能性があるのか。2017年10月に厚生労働省は「第3期がん対策推進基本計画」を発表した。新計画には「がんゲノム医療の推進」という言葉が加わった。網羅的がん遺伝子検査はこの“先鋒”を担い、先進医療に位置付けられるのだ。

 そもそもゲノム医療とは何なのか。ゲノムとは生物の体を形作るための情報、いわば“設計図”だ。DNAや遺伝子もゲノムの一部。一人一人で異なるゲノムの情報に基づき、患者それぞれに適した医療を施すというのが、ゲノム医療の概念である。

 ゲノムにまつわる病気は多々あることが分かっており、がんもその一つ。遺伝子異常との因果関係が明らかになっている。