社会保障関係の地方向け補助金等
新潟県庁が「県財政の緊急事態」を宣言し、行財政改革有識者会議の初会合が5月7日に開催された。筆者も委員の一人だが、宣言の理由は、標準財政規模に対する県債残高が約317%(全国平均は約195%)と47都道府県のうちワースト1位で高く、2021年度末には財源対策的基金(県の貯金に相当)が枯渇する見通しが高いためだ。人口減少で税収が伸び悩み、人口高齢化で県の社会保障関係の負担増は必至だ。
他方、中央集権体制の下、国が地方を誘導する政策手段の一つは地方向け補助金だが、小泉政権では、地方分権を行うと同時に財政再建を図るため、(1)国税から地方税への税源移譲、(2)補助金の廃止・削減、(3)地方交付税等の見直しを一体的に推進する「三位一体改革」が行われた。最終的に、04~06年度の3年間で、約3兆円の税源移譲が行われるとともに、4.7兆円の補助金が削減されて、地方交付税・臨時財政対策債も5.1兆円、削減された。
その結果、02年度に20.4兆円であった地方向け補助金等は、06年度で18.7兆円に縮小した。だが、それ以降は増加し、19年度予算では同27.6兆円となった。
三位一体改革にもかかわらず、地方向け補助金等が増加している理由は、社会保障関係の補助金が増加しているためだ。02年度での地方向け補助金等総額のうち、社会保障関係は10.5兆円、それ以外(文教・科学振興や公共事業関係等)が9.9兆円だったが、19年度では、社会保障関係が20.2兆円、それ以外が7.4兆円で、社会保障関係が地方向け補助金等の約7割を占めている。
この補助金の大部分が、国が地方公共団体と共同で行う事務に対して一定の負担区分に基づき義務的に負担する必要がある国庫負担金(高齢者医療、市町村国保、生活保護)である。その際、高齢化で社会保障費が増加すれば、国庫負担金に加え、地方負担分も増加し、地方財政を直撃する。
今後、新潟県のような問題に直面する地方公共団体は増えていくだろう。あらためて国と地方の役割分担が問われている。
(法政大学経済学部教授 小黒一正)