03年、マコーマックの死(享年72歳)とともにIMGは「テッド・フォーストマン&リトル社」に買収され、選手からイベントやテレビまでを掌握し「スポーツに介入し過ぎだ」と批判されたほどのかつての力はもはやない、という見方もされている。ともかく、IMGのアスリート・マネジメントの基本的な考え方、アスリートのメリットなどの点について、菊池広哉・IMGシニア・バイス・プレジデントは、こう話す。

 「選手のマネジメントにおいて、もっとも大切にしていることは、選手にベストパフォーマンスを発揮してもらうことです。選手の活躍がなければ、どのようなマーケティング活動も生じません。逆にいえば、活躍すれば黙っていても、マーケティング活動を展開することができます。

 IMGのオフィスは、アメリカの本社をはじめ世界30ヵ国・70以上あります。そういうエージェントは他にありません。IMG所属の選手は、海外から来日する場合、成田についた瞬間から、サポートをうけることができ、日本の選手が海外に出たときも同様です。海外で力を出し切れるようにサポートできるところが、最大のメリットです」

 現在、先にあげた選手のほか、IMGと契約している日本のスポーツ関係者は、次のとおり。

 松岡修造(テニス)、井原正巳(サッカー)、岩隈久志(プロ野球)、大山志保(ゴルフ)、浅田真央、安藤美姫、本田武史、小塚崇彦(以上、スケート)。

芸能プロダクション系、広告代理店系など
新興エージェントの問題点

 IMGのアスリート・マネジメントが広く認められてきた背景には、単に大規模なスポーツ市場というだけでなく、根底にスポーツそのものを尊敬するアメリカの文化があるのではなかろうか。

 それに引き換え、日本の場合はどうであろうか――。端的にいえば、「たかがスポーツ」であり、文化たりえず、したがって尊敬される対象になっていない。

 日本での特徴は、芸能プロダクション系や広告代理店系のエージェントが参入し商品価値のあるスポーツ選手との契約を巡って競争を行なっていることであろう。

 そういうエージェントは、ビジネスとして芸能タレント同様にテレビや広告に“商品”として売り込むことはできても、ベストパフォーマンスを発揮するように選手をサポートする意識も能力もない。にもかかわらず、芸能プロダクション系のエージェントは、選手のマーケティング収入の40%前後もの額をマネジメント料として取っている、ともいわれている(ちなみにIMGのマネジメント料は20%前後)。

 スポーツそのものを尊敬することのない日本の現実が変わらない限り、スポーツでメシを喰っていくというのは割に合わないし、虚しいのではなかろうか。第9回で取り上げた田沢純一投手や、第17回の北島康介選手のように、日本脱出希望の若いアスリートが増えているのも当然といえる。

 しかし、それとて、容易に希望が叶うわけではなく、むしろ企業スポーツの崩壊により、切り捨てられる選手たちのほうが多いのが現実だ。アスリートもまさしく「貧困」に直面しているといえよう。

 

 <今回をもちまして、当連載は終了となります。1年近くにわたりご愛読いただきありがとうござました>