中国の人口は14億1500万人で、米国の3億2700万人の4.3倍だから、1人当たりのGDPは2018年に米国が6万2600ドル(9位)、中国は9608ドル(70位)、日本は3万9300ドル(26位)だ。中国の成長率は6%余りだから今年には1万ドルには達しそうだ。

 IMFは米中が互いに輸入品に25%の関税をかければ、米中貿易は30%ないし70%もの減となり、成長率は米国で0.6%減、中国では1.5%減となる、と試算している。

 今年の成長率は米国で2.1%ないし2.5%、中国で6.4%程度と予想されており、IMFの試算が正しければ、米国の成長率は1.5%ないし1.9%、中国は4.9%に減速することになる。

 だが、それが続いたとしても中国の名目GDPは2030年代初期には米国を追い越しそうだ。

関税引き上げ、自国経済に影響
米国の家計や農家に打撃

 トランプ大統領は5月13日には中国からの輸入品の関税を引き上げたことで「中国から数千億ドルを取っており、今の状況が気に入っている」と発言し、関税は中国の負担になるかのような驚くべき無知を露呈した。

 もちろん関税は輸入した者に課すもので、25%の追加関税は米国民の家計に世帯当たり年間2294ドル(約25万円)の負担となり、216万人の雇用減少をもたらす、と米国の貿易コンサルタント会社は試算している。

 米国の流通企業が中国からの輸入品の関税を消費者に転嫁するだけでない。米国の製造業も鋼板や部品などの輸入価格が上昇すれば経営難になる。

 このことを予期したのか、米国の大手自動車メーカーのGMは、米国内の4工場の閉鎖を決めた。

 米国が中国製品に対し高関税をかければ、米国企業は中国以外の国からの輸入を増やすこともあるだろう。それでは米国の貿易赤字減少には役立たない。

 中国も報復関税を課すから、農産物の輸入相手はオーストラリアや南米諸国に移り、米国の農家に打撃となっている。

「中国をウォール街から追放せよ」との強硬論は、追加関税についての誤解以上にばかげた説だ。

 中国の外貨準備3兆ドル余りの大半はウォール街を経て米国への投資・融資に向けられており、それが引き揚げられたり、流入が停止されたりすれば、米国経済に致命的影響を招くだろう。

 中国は米国政府国債を1兆1200億ドル保有している。米国債の発行高の約7%で、日本も1兆800億ドルを保有する。もし中国がそれを売却すれば、米国債は急落、市場が大混乱したり、中国、日本にも大損害をもたらしたりする可能性がある。

 だがこれはかつての米ソ間の核軍備戦略の「相互確証破壊」に似て、中国もそのカードは最後の手段としてしか使えない。米国の方から中国をウォール街から排斥するのは自殺行為だ。