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廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

12年前の韓国版ジャスミン革命――韓国インターネット民主主義の光と影(後編)

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第4回】 2012年7月3日
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一度は見切りをつけた韓国は、ITをてこに大きく変化

 実は、深刻な経済危機に陥った97年ごろ、私は韓国に絶望していました。企業倒産は相次ぎ、ホームレスも増えていました。変わらない政治、尊敬できるリーダーもいない、貧しい家庭の子どもは高い教育が受けられず、格差が存在していました。いくら選挙をしても、相変わらずお金と権力を持った、私利私欲にまみれた政治家しか当選しない。私は、自分にできることなど何もないのではないかという無力感でいっぱいでした。この国で息子を育てたくなかった。韓国に見切りをつけ、国を離れたのです。

 しかしその後の韓国は、インターネットをてこに大きく変わりました。以前の韓国では、政治権力は、いくつかの有力な新聞や雑誌、テレビ放送局さえ押さえておけば、世論操作もできなくはない状況にありました。しかし、今や、誰も押さえきれないインターネットメディアの登場により、権力側は世論操作の術を失いました。韓国ではインターネット新聞が政治・経済などの分野ごとに数多く活動しており、国民の知る権利を満たしています。

 また、インターネット新聞は単なるネットの書きこみサイトではなく、マスコミとしての権限と責任が社会的に広く認められています。

 このようなことから、政治家への国民の監視の目は厳しくなりました。今では、毎回の選挙ごとに、議席の4割以上が落選して入れ替わるという状況です。

 こうした動きに対し、「ポピュリズム(大衆迎合)につながる」との批判もあるでしょう。確かにプラスの面、マイナスの面があると思います。しかし、従来のままの何も変わらない状態よりは、政治を良くしていける可能性を持っていることは確かだと思います。

 長い一党独裁の後、野党が政権を取ったものの、政権運営の力が弱く、失言や汚職などで次々とトップの顔ぶれが変わってしまう。「それでは」ということで、経験のある重鎮の政治家を起用すると、それも批判される……。日本の話かと思われるかもしれませんが、かつての韓国の政治の姿です。

 今の日本は、政治や選挙にITが導入されていないので、数少ないマスコミを抑えるだけで済みますから、政治家にとっては簡単です。それほど、インターネット民主主義は政治家にとって怖い力を持ったものなのです。インターネット上に流れている情報がすべて正しいとは限りませんので、思惑のある特定の人間に情報操作されてしまうなど、さまざまなデメリットはあるかもしれません。しかし、現状の政治の状況にも多くのデメリットはあります。また、ITリテラシーを高め、不特定多数に迎合することなく、自分の目で判断するといった能力を養うことも大切です。日本の国民は良識を持っていますので、プラス面、マイナス面を見ながらバランスをとり、判断することができると信じています。

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廉 宗淳
[イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。

廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

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