ピエール瀧被告(4月4日、東京都江東区の警視庁東京湾岸署 )ピエール瀧被告(4月4日、東京都江東区の警視庁東京湾岸署前で撮影 ) Photo:JIJI

コカインを使用したとして麻薬取締法違反の罪に問われたミュージシャンで俳優のピエール瀧=本名・瀧正則=被告(52)の判決公判が18日、東京地裁で開かれ、小野裕信裁判官は懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した。ところで、瀧被告を摘発したのが警察ではなく、厚生労働省だったことはご記憶と思う。実は瀧被告の初公判があった5日、大麻取締法違反の罪で起訴されたKAT‐TUNの元メンバー田口淳之介被告(33)を摘発したのも同省関東信越厚生局麻薬取締部(マトリ)だった。一方、女優の酒井法子さん、元プロ野球選手の清原和博さん、ミュージシャンのASKAさんを摘発したのは警視庁組織犯罪対策部(ソタイ)である。薬物犯罪の摘発という共通点はあるが、そもそもマトリ、ソタイとはどんな組織なのだろうか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

ストレス解消で高い代償

 まずは瀧被告の判決内容だが、起訴状通り、3月12日ごろ、東京都世田谷区の自宅とは別のマンションでコカインを吸引したと認定された。

 小野裁判官は「ミュージシャン中心の活動から映画やドラマにも活動の幅を広めたため私生活が圧迫され、ストレスを解消するため映画を観たり音楽を聴いたりしながら使用していた」などと指摘した。

 その一方で、主治医の指導に従い治療のプログラムを受けていることや既に大きな社会的制裁を受けていることを理由に、執行猶予を付した。

 判決の言い渡し後、小野裁判官は「芸能界に復帰できるかどうかは分かりませんが『薬物を使用していなくてもいいパフォーマンス』と思われるように願う」と説諭した。

 瀧被告は判決言い渡しの間、何度もうなずきながら聞き入り、言い渡し後は裁判官席と検察官席に向かって頭を下げた。控訴はしない方針と言う。

 判決公判の後、瀧被告は「多くの皆様に多大なるご迷惑とご心配をかけて大変申し訳ありません。二度とこのようなことを起こさないよう戒めます」とするコメントを出した。

 5日の初公判では黒いスーツ姿で入廷し、小さく一礼した瀧被告。人定質問で本名を名乗り、職業を尋ねられ「ミュージシャンでしたが、事務所を解雇されて無職です」とやや早口で答え、罪状認否では起訴内容を「間違いありません」と全面的に認めた。

 検察側は冒頭陳述で「20代の頃からコカインなど違法薬物を使用するようになった。ミュージシャンとして多忙になり、ストレスを発散するためだった」と指摘。その上で「常習性がある」として懲役1年6月を求刑していた。

 瀧被告は被告人質問で「いつかやめなければ、と。自分に甘かった」「多くの人に迷惑を掛けて申し訳ない」と反省の弁を口にしていた。