偶然から誕生した
OQTA HATO

 当初、OQTAはVR、AR技術を駆使した製品を開発していたが、なかなか商品化につながらなかった。そこで少子高齢化で市場が拡大する見守りサービスに目をつけ、遠隔地からスマートフォンで360度撮影できるカメラ開発に取りかかったという。

1人暮らしの母が大喜び!親子の絆を深める「IoT鳩時計」の不思議な力布をかけられ何も映らなくなったカメラで撮影した画面。ここがOQTA HATOの原点だ

「後輩の部屋で実験をしていたら、予期せぬ事件が起きたんです。シャッターを押したら、たまたま後輩がエッチなビデオを見ていた(笑)。シャッター音に気づいた後輩は、すぐにカメラに黒い布をかぶせました。それでも僕は実験を止めずに、日を置いてシャッターを押しました。もちろんモニターは真っ黒。だけど、何も写っていないのに、なんとも言えない想像が働いて、シャッターを押し続けてしまうんです。あとで後輩に聞くと、後輩もカメラのシャッター音を耳にするたびに、なんだかわからないけど、妙にうれしい気持ちになったそうなんです」

 このとき高橋さんは「これはいける!」と直感したという。

「カメラ機能はバッサリ切り捨てて、アプリのボタンを押せば『ぽよ~ん』と電子音が鳴るだけのデモ機を作りました。それを四国の母に渡し、東京で暮らす兄と僕が音を鳴らす。どう母の心境が変化するか観察しました」

「もちろんこんな簡単なもので大丈夫だろうかという不安はありましたね。開発していると、ついつい最新のテクノロジーを使いたくなってしまう。そうすれば世間の注目度も高くなる。“エンジニアあるある”だと思うんですけど。テスト期間が終わった3週間後、母にデモ機を返してもらおうとすると『あんた、これを私から奪うんかね?』と怒られたんです。ITリテラシーの低い老齢の母がその言葉を発したことで、ようやく手応えがつかめました」

 これまで高橋さんは、母に電話すれば小言を言われ、高橋さんもつい余計なことを口走ってしまう。その繰り返しで、母に連絡するのがおっくうになっていたという。それが音にすることで「いつも気にかけているよ」という“思い”が伝わったのだ。「僕にとっては、なんて言うか、まさに発明の瞬間でしたよ」と高橋さん。

 それがどうして鳩時計という形になったのだろうか。

「実は、鳩時計に決まったのは消去法です。老若男女が知っている人工的なプロダクトの中で、音がして、開発したデバイスを内蔵するスペースがあり、なおかつ、どの国のどの家庭に置いても違和感のないもの。これが意外と見つからない。そこで候補リストを作成し、条件を詰めていくと、残ったのが鳩時計だったんです」

 鳩時計の音色は、正確な時間を伝えるだけではなく、生活を豊かにしてくれるもの。まさに音で“思い”だけを届ける形にはぴったりだった。