また、現在、「自助」の必要性とその具体的な手段に関する啓蒙が大切であることは言うまでもない。

 あえて言うが、関係官庁の官僚の皆様には、今こそ萎縮することなく、政策の推進に大いに励んでいただくようお願いしたい。何といっても、このテーマがこれほど注目されているのだから、「今!」打つ手には効果がある。

やはり「報告書」が利用されている

 こちらも名前は挙げないが、ある金融機関のホームページに次のような文章で始まる記事があった。

「(小見出し)備えは十分ですか?意外にお金がかかるセカンドライフ(本文)政府公表の資料によれば、2人以上の世帯の1ヶ月あたりの生活費は平均で27.9万円。これに対して、会社員における平均的な公的年金の支給額は、22.1万円となっており、年金だけでは、豊かなセカンドライフを送るのが非常に難しくなっています」

 これはiDeCoを勧める記事で、この会社はiDeCoを扱っているのだが、「老後のお金が足りなくなると大変ですよ」と脅して、その「解決策として商品・サービスを売り込む」文脈の、典型的な金融広告のパターンであり、報告書が早速利用されている。

 多くの人にとってiDeCoは有利で利用のしがいのある制度なので、結果的にこの制度の利用を勧めることは悪くない。しかし、「老後にお金が足りなくならないように」とか「資産寿命を延ばすために」といった理由でリスクを取った資産運用を勧めるのは感心しない。

「リスクを取る資産運用」は、それが有利だと思う人が資産を増やすための手段として試みるといいのだが、資産寿命を延ばす目的に割り当てられる手段は「計画的な支出のコントロール(=計画的な貯蓄と資産の取り崩し)」であるべきだ。リスクを取る運用で資産を膨らませることで資産寿命を延ばそうと考えるのは適切でない。

 なぜなら、リスクを取る運用には結果の不確実性が伴う一方、個人の場合、結果が悪くても企業の年金基金が母体企業に損失の穴埋めをしてもらえるようなことを期待できないからだ。将来の運用益を当てにして、過剰支出・過小貯蓄に陥ってはならない。