といっても、私のアンテナの感度がよくなかったせいもあり、私の情報ネットワークにはまったくといっていいほどその開店に関連する情報が入ってこなかった。おそらく在中国日本大使館や上海総領事館もその開店情報をシェアするなど、その拡散にはタッチしていなかっただろう。レストランの小南国と手を組んだ中国進出なので、ドトール側がどこまで中国市場への攻略を積極的に考えていたのかは不明だ。機会があれば、ドトール側にじっくりそのへんのお話を聞かせていただきたいと思っている。

中国コーヒーの常識を変える
「Luckin Coffee」の快進撃

 しかし、中国のコーヒー市場はすでに私がドトールの中国進出を勧めていた2008年と比べて大きく変わった。巨大な資本を持つ企業がコーヒー市場に参入し、攻略する時代に入ったからだ。その典型例は「Luckin Coffee」(瑞幸珈琲)だ。

 Luckin Coffeeは2017年10月に設立。18年3月末には店舗数が290になり、さらにその4ヵ月後に、中国ですでに12年営業しているイギリス系コーヒーチェーン・コスタ(Costa)の店舗数を抜いたのだ。会社設立後14ヵ月で、Luckin Coffeeの店舗数は2000店に達した。スターバックスがこの店舗数になるまでに17年を要している。

 ここまでの規模になっても、Luckin Coffeeはまだ赤字の状態を続けている。なぜ赤字の事業をここまで大々的に進めているのか。Luckin Coffeeの経営陣には、いわゆるその道の達人が入っているからだ。創始者の神州優車集団COOの銭治亜氏は、レンタカー会社である神州租車と神州優車の2社を創始した長老だ。10年で神州租車と神州優車の2社を上場させた実績を持っている銭氏は、多くの会社の役員を務め、20年以上もビジネス界での経歴を持つ。神州租車も一時時価総額が460億香港ドル(6530億円)にも達したことがある。

 Luckin Coffeeもその道を走っている。2018年12月12日、2億米ドル(約222億円)のシリーズB(スタートアップ企業がミドルステージで行う資金調達のこと)ラウンドを獲得した。2019年4月22日、アメリカの中国証券監督管理委員会にIPO申請をした。ナスダック上場を目指しており、最高融資額は1億米ドルとなる。