いつも心に
「ドクターズルール10」

 最後に、加茂院長が「肝に銘じて日々の診療にあたっている」という「ドクターズルール10」の一部を、『腰痛は治る!』(加茂淳著)から抜粋して紹介する。これは、加茂院長が開業する前、石川県立中央病院の勤務医だった時代に、金沢大学整形外科の先輩で、上司の山田浩先生から指導されたものだという。

 ・臨床的証拠がないからといって、病気が存在しないという証拠にはならない。患者の訴えは正しいものである。医学的にあり得ないと考えずに、訴えに耳を傾けること。患者は全身で24時間、疾病と対決している。

 ・あなたが診ようが診まいが、ほとんどの外来患者の病気は治癒するものである。病人が治るのを邪魔しないのが良い医師である。

 ・痛みはいかなるときも速やかに止めること。医療では完璧よりも急を尊ぶ場合が多い。

 ・投与薬はできるだけ少数に絞ること。量が増えれば、副作用の起こる可能性は指数関数的に高くなる。老人のほとんどは服用している薬を中止すると体調がよくなる。

 読んでみると本当に、日々の診療にしっかりと反映されていることに感銘を受ける。しかも本稿で紹介した治療法はいずれも保険診療内、日本中に“高額なのに効かない治療”があふれているなかにあって比較的安価に行えるものばかりなのだ。

 さて、5月に刊行された『腰痛診療ガイドライン2019』(日本整形外科学会、日本腰痛学会監修)では、「コルセットは腰痛に効かない」ということが初めて結論づけられた。コルセットが効かないことは世界的にはだいぶ前から知られていたし、逆に「コルセットをすることで、腰痛のない人でも腰痛になる恐れがある」という研究報告さえあった。まさに「病人が治るのを邪魔」する器具が、現在に至るまで、保険点数が認められる形で使われ続けてきたことに衝撃を覚えずにはいられない。

 日本の腰痛診療は変わらなくてはいけないと思う。

 加茂院長は、「何か迷いが生じるたびに、この教えに立ち戻る」のだとか。

>>続編は6月27日に公開予定です。

◎加茂 淳(かも・じゅん)
加茂整形外科医院(石川県小松市)院長。金沢大学医学部卒業。富山県立中央病院、石川県立中央病院にて整形外科医として研修。1982年小松市に加茂整形外科医院を開業、現在に至る。整形外科専門医、リウマチ専門医、心療内科登録医。これまでに治療してきた患者のカルテは7万件以上。手製のホームページに寄せられる患者からの相談に、1件1件、丁寧に回答していることでも有名。医院、ホームページ共に、慢性痛難民の駆け込み寺になっている。