慢性腰痛で「ヘルニア、狭窄が原因」と言われたら医師を疑うべき?写真はイメージです Photo:PIXTA

慢性的な腰痛で医療機関を受診した際、X線やMRIの画像などを見せられて、医師にヘルニアや狭窄を指摘され、手術を強く勧められることがしばしばある。それは本当に正しいのだろうか。慢性痛の専門医らは、こうした診断や手術について「多くは医師の勉強不足によるもの」と否定する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

神経を圧迫されても
痛みが起きることはない

「椎間板ヘルニアですね、手術しましょう」

「脊柱管狭窄症です。そんなにつらいなら、手術してあげましょうか」

 延々と治らない耐えがたい腰痛に対して、ほとんどの患者が整形外科医から告げられるのはそんな病名と治療法だろう。(ほか、腰椎すべり症、坐骨神経痛、骨の変形もポピュラー!)痛みが辛いほど、痛みが長引いているほど、「先生、手術をお願いします」となるわけだが、お勧めできない。

 なぜなら、その痛みが最初の診断を受けてから3ヵ月以上も続いているようなら、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症のせいではないからだ。

「ヘルニアや狭くなった脊柱管が神経を圧迫するせいで腰痛が生じている、という説明を真に受けてはいけない」

 そう断言するのは、腰痛をはじめとする慢性痛の名医として名高い、加茂整形外科医院(石川県・小松市)の加茂淳院長だ。JR小松駅から車で10分ほどのところにある医院には、難治性の慢性痛に苦しむ患者が全国から訪れ、これまでに治してきた患者は7万人を超える。

「95年に国際腰痛学会が出した論文によると、腰痛がまったくない人でもMRIを撮ると76%に椎間板ヘルニアが見つかり、逆にヘルニアがある人でも8割は、まったく痛みを感じていないことが分かっています。同様に脊柱管狭窄も、高齢になると70%に見られますが、痛みを感じない人は大勢います」