グローバル市場で日本企業の苦戦が続いている。苦戦は複数の分野にわたり、話題に上らない日はないくらいだ。しかし、毎週のように新興国に足を運ぶ筆者から見て、今でも日本企業の製品が優れており、日本人の働きぶりが秀逸であることに変わりはない。円高になったとはいえ、産業の集積度やインフラのレベルも高い。企業としての体力もあるし、経験も豊かだ。にもかかわらず、日本の製造業の先行きに暗雲が立ち込めているように見えるのは、日本が信じてきた戦略に問題があるからではないか。
本連載では、こうした理解の下、長きにわたり日本の産業戦略の根底を成した価値観の見直しを迫り、日本の強みを活かした転換の方策を提示したい。
半導体、薄型テレビ……
先端産業の凋落が続く
2012年3月期、日本の大手電機メーカーは大幅な赤字を計上した。ソニー、パナソニック、シャープを合わせ1兆7000億円にも達する、という屋台骨にも響く巨額の赤字だ。主力事業である薄型テレビの収益が、大幅に悪化したことが大きな理由だ。
つい数年前まで1インチ1万円と言われていた薄型テレビの値段は、1インチ1000円近くまで下落した。経営と現場が一体となった「カイゼン」でコストを下げ、品質を向上させ、世界市場で高い競争力を築いてきた日本型の経営は、あまりにも速い市場のスピードについていくことができなかった。
一方で、勝者であるサムスンも高収益を上げているわけではない。市場の行方は、規模のメリットと価格がバランスするまで、何時、どの企業が退陣するかにかかっている。いずれにせよ、高い性能で世界市場を席巻した日本企業の姿は、過去のものになろうとしている。