スマートシティは次世代インフラ市場の宝庫である。しかし巨大に見えるインフラ市場の多くは、技術的に成熟したローテク技術や、どこの国にも規制があり他国企業の参入が容易ではない土木建築が中心である。次世代インフラ市場に日本企業が参入する際には、強みである「組み合わせ」の力が発揮できるフロンティア分野へ挑戦することが必須だ。日本企業が、「組み合わせ」発想で成長のきっかけをつかむためには、ダイナミックに動く新興国のスマートシティに対し、スピード感をもってソリューションを提示したい。

スマートシティは
次世代インフラ市場の宝庫 

 前回、ハイブリッドシステムからスマートハウス、スマートハウスの住宅街(スマートタウン)へと発展させた「産業間の連鎖の流れと消費者の先取り思考」、という日本の強みについて述べた。これを加速するのに必要なのは、住宅街より大きな「シティ:都市:市」を視野に入れた戦略である。

 シティを対象にすれば、「組み合わせ」の範囲は家庭向けの設備から都市のインフラ、や政策運営まで拡大する。そこでは、自治体の政策運営ノウハウ、公害を克服し環境の良い地域を創り上げた実績、湿潤な気候に適した廃棄物処理やリサイクルの技術、世界最高の技術を誇る信号システム、といった日本の強みを発揮することができる。

 こうした脈絡で注目されるのが、世界で広がりつつあるスマートシティの市場である。

 新興国では新しい都市が次々と生まれている。農村部から都市へ人口が移動しているからである。今後、2~3億人が都市に移動すると考えられる中国では、省、市が主導する都市開発が何千とあり、その中に200ものスマートシティと称する計画があると言われる。一方で、都市化は環境負荷の増加を伴う。こうした、「都市化×環境負荷低減」という構図が新興国のスマートシティ市場の基盤となっている。

 この1、2年、日本の名だたる企業のトップが「スマートシティに注力する」と発言している。スマートシティは単純に捉えると、新興国の都市開発市場ということになるが、企業のトップが関心を寄せるのは、スマートシティに次世代インフラ市場としての可能性があるからだ。