現地の介護関係者に聞けば、同様の意見や見解が多かった。つまり、現在のところ、(1)ハード面では、福祉機器、リハビリ機器、(2)ソフト面では、認知症ケアやリハビリのノウハウ――。少なくとも、この2つの分野には、可能性があるということだ。

ジェトロ(日本貿易振興機構)による「日中高齢者産業交流会」
ジェトロ(日本貿易振興機構)による「日中高齢者産業交流会」の様子  Photo by T.Y.

 折しもチャイナ・エイドの屋外特設会場では、ジェトロ(日本貿易振興機構)による「日中高齢者産業交流会」が開催され、中国企業との個別相談が行われていた。そこには熱心な商談風景があった。

福岡県からは複数の中小企業がビジネスチャンスwを求めて出展していた
福岡県からは複数の中小企業がビジネスチャンスを求めて出展していた Photo by T.Y.

 とはいえ、中国企業も認知症ケアを含め、日本企業や日本の介護のノウハウを急速に吸収し、キャッチアップしている。現地では「日本から『学ぶ』よりも、日本が介護を学んだ北欧から学んだほうがいいのではないか」という声さえも上がり始めている。

 実際、以前に比べると、中国の介護人材も次々と成長している。

上海遐福養老院の総経理アシスタントの趙曼静氏
上海遐福養老院の総経理アシスタントの趙曼静氏。このホームは以前、宿泊用マンションだった Photo by T.Y. 

 上海市の高級老人ホーム「上海遐福養老院」を見学した際、総経理アシスタントで介護責任者の趙曼静氏から「入居者の自主性を生かしたケアによって、96歳の入居者が半年足らずで歩けるようになった」などの話を聞き、同行していた日本の介護事業者幹部らの表情が一変して真剣になったのが強く印象に残っている。

チャイナ・エイドには、介護業界にかかわらず、さまざまな業種の日本企業が参入していた 
チャイナ・エイドには、さまざまな業種の日本企業が参入していた Photo by T.Y. 

 前述した福寿康(上海)家庭服務有限公司CEOの張軍氏のように、日本での介護ビジネス経験者が中国で介護ビジネスを起業して成功する事例も目立ち始めている。彼らが成功するのは、中国の文化や習慣を熟知しており、中国人の好みに合わせたサービスのローカライズ(現地化)がうまくいっているからだ。

 いつまでも「自分たちの介護の技術やノウハウのほうが優れている」という考えで慢心していては、競争の激しいアウェー市場である中国では生き残ることはできないだろう。

◎取材協力・通訳(敬称略):日中福祉プランニング・王青、朴海花、董旻