高額療養費制度
1ヵ月に患者が支払う自己負担額に上限を設けた「高額療養費制度」。しかし落とし穴に要注意です Photo:PIXTA

 A子さんとB子さんは、この10年、悩んできた膝の痛みをとるために、同じ病院で膝の人工関節手術を受けた。

 年齢は、ともに73歳。人工関節を入れたのは、2人とも右膝で、受けた治療内容やリハビリのプログラムも同じ。入院日数はともに20日間だった。

 医療費の自己負担が軽減される健康保険の高額療養費の所得区分は、2人とも「現役並みI」なので、当然、支払うお金も同じになるはずだ。ところが、最終的に支払った医療費は、A子さんが約10万円だったのに対して、B子さんは約18万円。

 まったく同じ治療を受けたのに、2人の自己負担額に約8万円もの差が出たのはなぜなのだろうか。不思議に思ったB子さんは、病院に問い合わせてみたが、医療費に間違いはないという。

 この自己負担額の違いは、「高額療養費」の運用ルールから生じるものだ。

その月の「1日から末日まで」の
医療費で高額療養費を計算する

 通常、病院や診療所の窓口では、年齢や所得に応じてかかった医療費の1~3割を自己負担する。70歳未満で自己負担割合が3割の人の場合、かかった医療費が1万円なら3000円が自己負担分だ。

 だが、手術をしたり、化学治療を受けたりして、医療費そのものが高額になることもある。その時、通常の医療と同じような自己負担額だと、3割の負担でも、医療費が100万円なら自己負担額は30万円、医療費が200万円なら自己負担額は60万円だ。

 これでは、医療費が家計の重荷になり、防貧対策としての健康保険の意義を損なうことになりかねない。そこで、1973(昭和48)年に作られたのが「高額療養費」で、1ヵ月に患者が支払う自己負担額に上限を設けたものだ。

 この制度があるおかげで、医療費が高額になっても、それに比例して自己負担額が増えていくことはなく、一定の範囲内に抑えられるようになっている。