どういう準備が必要なのかは、いまもわからない。ただ、Aさんは「自信が積み重なっていって、ある閾値を越えた状態で、いい環境にポンと入ると、改善されるのではないか」と指摘する。

「ある閾値を越えていない状態で、いい環境に入ったとしても、何も起きない。また、研究室の教授が、僕の研究内容にいい評価をしてくれたことが、自分の中では、かなりの自信の積み重ねにつながった。誰かから認めてもらうことで、自信の積み重ね度合いが上がって、エネルギーが閾値を越えていく。かつしゃべりやすい環境の中に置かれたことがそろって、大学4年生のとき、話ができるようになったんです」

仕事はできても会社になじめない
大手メーカーに就職も拒絶反応が…

 その後、大学院に進んで、同じ研究室で2年間過ごした。

 就職も、大手メーカーから求人がたくさん来ていて、推薦で大手メーカーへの入社も決まった。

 ただ、初めて企業の社会に触れて、拒絶反応が起きたという。

 新入社員約800人のうち、Aさんの配属された事業所にも、約100人の同期がいた。

「何かおかしい。このまま働いていて、いいのだろうかという不安がすごく大きくなって、軽いうつ状態になったんです。ここで、この仕事を、あと40年続けるのか…みたいな」

 Aさんは、仕事能力には問題なかった。上司への報告、連絡、相談は、確実に、もれなく行うことができた。

 会社からも、Aさんは高く評価されていたという。仕事をやれる自信もあった。

 社会に対しては「なじめない。相容れないところがある」とAさんは言う。

「社会にうまく適応できない。幼稚園から大学4年のときまで、ずっと1人でやってきた。社会の中にいたけど、孤立して生活していたようなもの。急に社会の内部に組み込まれたときに、拒絶反応が起きる。組織の歯車化しちゃうんです」