友人が「身に覚えのない請求メールが携帯電話に送られてきた」と言うので、その文面を見せてもらった。「サイト運営会社より委託を受け連絡させて頂きました」で始まる請求文には、以下のような脅し文句が書かれていた。

「不当に延滞を続ける悪質な利用者に対し『利用規約』に基づき携帯名義認証から追跡し、お客様の身元調査を行い、損害賠償を求める裁判の申請手続きが行われております」

「通信記録という証拠に基づいた裁判であるため『利用規約』に同意して登録された以上は、正当な理由無く支払いを免れる事は出来ません」

 ご丁寧に、担当者の名字(名前はない)と電話番号が書いてあり、それらしく装ってはいるものの、明らかな詐欺である。

増加する架空請求から消費者を守る
2人の子持ち消費生活アドバイザー

「最近増えてきたスマホの架空請求の手口ですね」

 と、今野ともみさん(仮名、48歳)は言う。消費生活アドバイザーの資格を持ち、ある公的機関で非常勤の職員として働いている。

「こういう詐欺の被害って、けっこう多いんでしょうか?」

「多いですね。特にお年寄りは狙われやすいです」

 たとえば、ありもしない会社の社債を5万円で引き受けてくれたら後に15万円で買い取るからと言われ、被害者が実際に金額を支払うと、相手はのらりくらりと逃げ回り、ついには連絡がとれなくなってしまう。そんな相談が後を絶たない、という。

「目立つのは、いわゆる劇場型と言われるタイプです」

「劇場型?」

「そう。この劇場型はネタが尽きないんです。よくぞ考えるものだというくらい、手を変え品を変え、新しいタイプが出てきます」

 最近はインターネットに絡んだトラブルも多く、小中学生なども被害を受けている。業者に雇われた“サクラ”が芸能人、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすまし、相談を装いながらサイトに誘導し、メール交換などの有料サービスを利用させて高額の料金を搾り取る。いわゆる「サクラサイト商法」も目につく。 

今野さんが出勤するのは週に4日。うち1回は外食し、お弁当を持って行くのは週に3日と決めている。外食でよく食べるのは中華麺だそう。「自宅ではあまり食べられないから」というのがその理由。

「ところで、何にしましょうか?」

 待ち合わせた中華料理店で、メニューを広げる。

「わたし、担々麺がいいかな」

 と、今野さんが言う。

「麺がお好きなんですか?」

「そうなんですよ。外食の時はだいたい麺ですね。家では、あまり作りませんから」

 大学生と中学生、2人の息子を持つ母親でもある。