輸出管理の問題は、全面禁輸の措置とは違い、不正な流用がなく適正に使用されているのであれば許可される。加えて、その許可に要する時間も、通常90日といわれるよりもはるかに短期間であるとの話も聞く。

 いずれにせよ、今回の措置に伴う直接的な影響は、韓国政府が懸念するよりも小さいものとみられる。したがって、韓国政府・国民は日本に対し感情的に反発するのではなく、理路整然と不正輸出の事例をきちんと説明し、今後の不正を極小化する努力をしていくことが、現在取り得る最善の道ではないだろうか。

 WTOに提訴しても、判断が示されるまでには長い時間がかかる。それに、安全保障に関連した輸出管理の問題であるため、韓国の立場に同調する国も上級委員もいないのではないだろうか。老婆心ながら、より現実的な努力をする方が得策ではないかと思う。

韓国経済の不振の原因は
日本の輸出管理の問題ではない

 文政権の経済運営のせいもあり、昨年の韓国企業の海外投資は、一昨年と比べ倍増し、逆に外国からの韓国への投資は、本年上半期に半減しているという。そうした中で、韓国の不正輸出が疑われ、日本との経済摩擦が深刻化すれば、韓国国内への投資意欲はいっそう減退するだろう。

「文在寅という災厄」「文在寅という災厄」 武藤正敏著、悟空出版刊

 さらに、日本製品不買運動までやれば、韓国の消費市場はいっそう縮小し、韓国経済の足かせとなることは間違いない。そうした韓国経済全体を見渡してみた場合、日本の措置による直接的なマイナス効果は大きくなくても、韓国経済がいっそう萎縮していくことは避けられないかもしれない。

 文政権のこれまでの経済運営の結果、世界の格付け機関、韓国の民間経済研究所ばかりでなく政府系の研究所も、今年の韓国経済の見通しを下方修正している。直近の韓国経済の現実には悲観的にならざるを得ない。文政権は日本の対応をいいことに、韓国経済の失速は日本のせいだと言うだろう。しかし正確に言えば、文政権の経済運営が主たる要因だ。

 下手な言い訳をしても日韓関係も韓国経済も良くならない。大統領の政治は結果責任でもある。現実を直視し、国益を考えた責任ある政治を行ってほしいものだ。

(元・在韓国特命全権大使 武藤正敏)