ソーシャルメディアが公共の議論の場を混乱させ、ドナルド・トランプ米大統領は米国の政治を混乱させている。この2つの事象を背景に、判事らは言論の自由を定めた合衆国憲法修正第1条の重要な基本理念を見失っている。その好例は、ニューヨークの第2巡回区控訴裁判所が今週示した、トランプ氏のツイッターアカウントは公共のフォーラムだとする判断だ。
大統領候補だった当時のトランプ氏は、何百万人もの米国民と対話する道具としてツイッターをうまく利用してきた。そして現在も個人アカウント「@realDonaldTrump」を使って意見を表明し、政策を公表し、独特の政治姿勢を打ち出している。同氏はまた、自身のツイートに対する特定ユーザーのアクセス、リプライ、リツイートを排除している。
排除されたユーザーの一部は、彼らの言論の自由が制限されたとして、大統領を訴えた。トランプ氏が政府の政策を声高に伝える道具としてツイッターの利用を決めたことにより、同氏の個人アカウントは、事実上の公開討論の場になっているというのが彼らの主張だ。トランプ氏が自身を批判するユーザーを排除することは、修正第1条で禁じられている見解の違いによる差別に該当すると彼らは主張している。
しかし、排除されたユーザーも、サインインすることなくトランプ大統領のアカウントにアクセスすることはできる。彼らはまた、自身のツイッターのページや他のページを通じて、大統領を批判したり、他のネットユーザーと意見交換したりできる。原告らは、ツイッターは公会堂と同様の「対話式」の空間だと主張しているが、こうした主張は公共の場とプライベートな場との区別をあまりにも安易に無視している。
ツイッターは私的なプラットフォームだ。最高裁が先月ハレック判決で指摘したように、「ある私的団体が発言のためのフォーラムを提供した場合、その私的団体は通常、憲法修正第1条の制約を受けない。私的団体はステートアクター(国家主体)ではないからだ」。最高裁はさらに、長年の「ステートアクションの法理は政府と個人の間に極めて重要な境界線を設けており、それによって個人の自由の及ぶ範囲を強く保護している」と説明した。