SNSが社会的な影響力を増し、犯罪にも利用されている。また、アメリカのトランプ大統領のツイッターの投稿は、時に政治・外交問題にも大きく発展している。しかし、ツイッターCEOのジャック・ドーシーは、どんな使われ方をされても、ツイッターの存在価値にこだわる姿勢を貫いている。それはなぜなのか? グーグル、ソフトバンク、ツイッター、LINEで「日本侵略」を担ってきた戦略統括者・葉村真樹氏の新刊『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から、内容の一部を特別公開する。落合陽一氏推薦!
※追記:本記事は著者の過去の個人的な経験に基づいた見解であり、本文中で取り上げている企業の公式見解ではありません。

ツイッターは、大事件が起きてもなぜ投稿を安易に削除しないのか?

ツイッターの匿名性を利用した神奈川県座間市の事件

 仮に「自己超越欲求」に立脚した視座の高い「存在価値」を定め、その存在価値に基づき企業を経営していたとしても、時代の変化によって、当初は想像もしなかったことが起こり、自らの存亡の機に直面することは十分にありうる。

 それが、以前は10年や20年単位のものであったものが、現在では5~6年単位と速いサイクルとなりつつある。そして、その典型例として、ツイッターが挙げられるであろう。

 2006年に誕生してから十余年を経て、ツイッターは創業者の当初の想像を大きく超えた使われ方をされる中で、数多くの問題に直面しながらも、その成長の過程で見定めた自らの存在価値にあくまでこだわる姿勢を貫いている。

 2017年10月31日、神奈川県座間市で極めておぞましい事件が発覚した。当時27歳の男の住むアパートから女性8人、男性1人の計9人と見られる遺体が発見され、男はまず死体遺棄容疑で逮捕された。被害者の多くは自殺願望を持っていたと見られ、逮捕された男はツイッターを利用して自殺を幇助することを口実に被害者たちと接触、交流することを開始している。男の手口はツイッターの特徴をうまく利用したものであった。

 ツイッターはフェイスブックと異なり匿名での利用が多い。そのため、ユーザーも自身が何者かバレないので、知人には言えないようなことをツイッターで吐露することも多い。

 そして、フェイスブックは基本的にはお互いに承認を得た者同士の投稿だけが見られるというクローズドネットワークであるのに対して、ツイッターは基本的には誰もがあらゆる人の投稿を見ることができるオープンネットワークとなっている。

 そして、機能面でツイッターが独特なのが、そのようなオープンネットワークで投稿された言葉を「検索」して探すことができるということである。逮捕された男はこの機能を活用して、自殺願望者を探してはアプローチしたのである。