ナスダック証券取引所に紙吹雪が舞う中、手工芸品販売サイト「エッツィー」の株価は上場早々に94%上昇した。これを見たチャド・ディッカーソン最高経営責任者(CEO)は恐怖の念に襲われた。家ではまだよちよち歩きの子どもが食べたものをもどしてぐずっていた。ディッカソーン氏も、エッツィーがこんな熱狂的な期待に応えられるか心配するうち、胃がむかむかしてきた。オフィスに戻ると、従業員たちがディッカソーン氏にバケツ一杯の氷水を浴びせて祝賀気分を盛り上げた。その後は一日中、冷たくぬれたスーツで震えていたことを覚えている。現在47歳のディッカソーン氏は当時について「成功と興奮じみた狂気の瞬間だった」と語る。同氏は新規株式公開(IPO)から2年後の2017年にCEOを退任した。IPOで紙吹雪の中に立ったときには、「この株価を維持しなければ、ひどいことになる」と考えていたという。
起業家たちの心の闇、華やかなIPOの裏側
有料会員限定
あなたにおすすめ