「怖いよ、無理!」

 顔面蒼白(そうはく)になった千春さんの顔と紫色の指先を見て、鉄郎さんは早々にギブアップした。

鉄やニッケルが含まれていなければ
指輪はしたままでも大丈夫

 仕方なく病院へ行き、指輪が抜けなかったことを相談すると、「大丈夫ですよ。そのままお受けください」。受付の女性から笑顔で言われ、なんら問題なく、MRIも人間ドックも終了した。

「MRIは巨大な磁石のようなものなので、鉄やニッケルなどが多く含まれるアクセサリーの場合、お互いに作用しあって、検査データを大きく乱してしまいます。また、熱を帯びて、火傷(やけど)してしまうこともあるので、外していただくことになっているんですけど。

 婚約指輪や結婚指輪は、大抵金やプラチナですよね。鉄やニッケルは含まれていないので、まず心配ないと思って大丈夫なんです。

 うちのホームページにも、そのことは明記すべきですよね。説明が足りず、申し訳ありませんでした。痛い思いをされましたね」

 検査後の説明ではねぎらいの言葉までかけてもらい、千春さんはいい気持ちになって帰宅の途についた。

(でもなあ、このまま指を圧迫しつづけるのは問題だよね。体に悪そう。それに将来私が死んだときも、誰も外せないまま一緒に火葬することになっちゃう。それはちょっともったいないしなぁ)

 考えながら歩いていると、消防署の前にさしかかった。