年初から株価が2倍近く上昇し、国内最大手の武田薬品工業を時価総額で猛追する同3位の第一三共。株価上昇要因のがん治療薬が花開けば合併以来初の黄金時代が訪れる。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

 医師の処方箋が必要な医療用医薬品主体の製薬会社の存亡は、革新性の高い大型製品を生み出せるか否かに懸かっている。年1000億円以上売り上げるブロックバスターだった高血圧症治療薬「オルメサルタン」の特許が2016年に切れた国内製薬3位の第一三共も然りだ。

 「もう先のないオワコン(終わった会社)かと転職活動を始めた数年前。ピカピカなデータを示すがん治療薬の芽が出てきて社内がどよめき、もうしばらくこの会社に懸けてみようと思った」と、ある現役社員は笑ってそう振り返る。

 第一三共は抗体薬物複合体「トラスツズマブ デルクステカン」(一般名、開発コードはDS-8201)など、がん治療薬の開発を順調に進めており、製品大型化へ社内外の期待は膨らむ一方だ。株価は年初比2倍近くの6080円で時価総額は業界2位。トップの武田薬品工業を猛追している(16日時点)。まさに令和の逆襲だ。

 平成を振り返れば、第一三共は07年の三共、第一製薬の完全統合以降、業績の足踏みが続いてきた。

 08年当時社長の庄田隆氏らは医療用医薬品とジェネリック医薬品の「ハイブリッドビジネス」構築を掲げてインド大手ジェネリック医薬品メーカー、ランバクシーを約5000億円で買収したが、買収後に品質問題が発覚。09年3月期第3四半期に3540億円の特別損失を出し、最終的に14年、事実上の売却をした。